第44話 衝動
ルーベルカイムの街角を金髪の修道服を着た女が歩いている。
「うっ……ああ……」
金髪の女ガラテアは足を止め苦しそうに胸を押さえる。
「あっ……あっ、はあはあ……」
「おや、大丈夫ですか?」
往来をゆく年老いた男が苦しそうに胸を押さえるガラテアに声をかけた。
「……ご老人、心配には及びません……お気遣いなく」
……ガラテアは大通りを避けて人通りのない裏路地に入っていく。
「ああ……」
彼女は路地の壁に手をつく……顔が紅潮し、呼吸が乱れている……彼女の首元を大粒の汗が流れ彼女の身体を濡らしていく。
「熱い……」
ガラテアは呼吸を乱しながら、下腹部に手をあてる。
「まずい……胸が……膨らんできた……うっぐ、あああぁっ!」
彼女は嬌声を噛み殺しながら、膨らんでいく胸を両手で押さえる。
「はあはあ……これは……収まらん……」
修道服の中で彼女の胸が大きくなっていく……黒霊布の下着が胸に溜まった聖槍の魔力を吸収し、魔力により成長したバストに合わせ形状を変化させる。
「はあはあ、少し楽になったか……」
……その時、路地の奥から三人の男が歩いてきた。
「なんだ?こんな路地裏で変な声出してやがるのは……」
スキンヘッドの大男がガラテアの全身を品定めするような目つきで見る。
「……ほう、随分といい女じゃねぇか……魔性持ちか?」
「兄貴?」
「やっちまうんですか?まずいっすよ?」
「ああそうだ、最近スリルが足りねぇ……悶々として満足できねぇんだ……お前ら、人払いをしろ……」
大男は上着を脱ぎ捨て、血走った目で両脇の男を睨みつけた。
「りょ了解」
大男の傍らに居た男がガラテアに小瓶を投げつける。
「くっ!」
小瓶の液体を被ったガラテアの足元がふらつく。
「これは……毒か?」
「隔離障壁構成!」
もう一人の男が路面を杖で叩くと路地に力場が形成された。
「これでここから逃げられねぇぜ……音も外に漏れねぇ……加速術式!……ふっ!うぐううううああああああっ!!!」
雄叫びを上げる大男の身体が炎に包まれ、彼の筋肉が隆起し肉体が巨大化していく。
「ルークスジャベリン!」
ガラテアは大男へ向け光術を放つが、男の纏った火炎がガラテアの放った光の槍を相殺する。
「ふう……変身完了……この身体の相手してもらうぞ」
炎を纏い肉体を変化させた男は息を深く吸い込むとガラテアへ向けて口から大量の火炎を吐き出す。ガラテアは男の放った火炎を躱してく。
「やるねえ!やはりいい女だ!気持ち良くしてやるぜ!」
男は燃える拳を火炎を躱したガラテアへ強く打ちつける。
「障壁展開!」
ガラテアは炎を纏った男の拳を光術障壁で受け止める。
「いいねぇ!たぎってきちまうよ!」
「天雷!」
男の頭上にガラテアの放った雷撃が降り注ぐ。
「ぐあああっ」
ガラテアの光術を喰らった大男の身体から白い煙が上がる。
「兄貴!」
「効くぜ……並みの術者なら一撃でやられちまうとこだ、だが相手が悪かったなあ……」
その時、ガラテアの足元で投擲された擲弾が炸裂する。
「うっ」
彼女が怯んだ隙に大男は足を払った。ガラテアは転倒し背中を路面に激しくうちつけた。
「喰らえ!」
大男は転倒したガラテアへ数発の炎弾を放つ。
「直撃だ!」
ガラテアの身体が爆炎に包まれる……大男は路面に伏したガラテアの身体を足で押さえつけた。彼女の修道服が破け魔力抑制の術式の刻まれた黒霊布の下着があらわになった。
「魔力強化の白霊布ではなく魔力抑制の黒霊布か?光術の使い手が魔力抑制だと……?」
その時、ガラテアの肉体に障壁が展開され、大男の足がガラテアから弾かれる。
「覚醒か……人間の女で覚醒が使えるとは、やるじゃあ……いや、なんだこれは……!?」
ガラテアの蠱惑的に変異した肉体の暴走を抑制していた黒霊布の下着が聖槍の魔力に耐えきれずに弾け飛んだ……彼女の身体が浮遊しながら発光し、融合した隕鉄の聖槍の魔力に包まれ、彼女の肉体が眩い光の中で女神の姿に変異していく。
「変異体だと……?化け物か!お前ら気をつけろ!」
聖槍の魔力が彼女の白く滑らかな肌を包み、白霊布を形成し秘所を覆い隠す。
「……黒の衝撃」
「うっぐああ!!!!」
小瓶をガラテアに投げつけた男の身体がガラテアの放った淵術の波動によって路面に押し付けられ、男は悲鳴を上げる。
「こいつ!」
大男は拳をガラテアに振り下ろす。ガラテアの拳と大男の炎を纏った拳が激突する。激突の衝撃で
大男の腕から血が噴き出す。
「ぐっ、こいつはヤバい!おい!障壁を解け!ずらかるぞ!」
「ダメだ兄貴!解除出来ない!奴に術式を干渉されてるようだ!」
「くそ!」
「……天雷」
……ガラテアが魔力を込め片腕を上げる。
「結界展開!」
巨大な稲妻は彼の展開した結界を突き破り、大男の身体を頭上から貫いた。ガラテアの光術を受けた大男は全身から血を流しながら膝をついた。
「ぐっ、さっきとは大違いの威力だ……」
彼が膝をついている間に、ガラテアは杖を持った男に素早く接近する……杖を持った男はガラテアに高く蹴り飛ばされ、路面に叩きつけられた。
「これはマズイ……」
大男が立ち上がったタイミングで、ガラテアは魔力で強化された拳を大男の鳩尾に叩きこむ。
「っ!あっっ……」
大男は倒れこみ路面に顔面を打ちつけた……ガラテアは倒れこんだ男の身体を踏みつける。
「くそ……お前……外法の魔女か?最近の異変はお前の仕業……?」
「……何を言っている?……私の情報が広がると不味いな……」
ガラテアは大男のこめかみと額に指をあて彼の脳に魔力を流し込もうとする。
「待て、殺さないでくれ」
「……聖槍の魔力に引きつけられて来たのだろう、殺しはしない……だが……」
ガラテアは大男のこめかみと額から手を放すと、大男の身体を押さえつけている足から魔力を流し込む。
「……うぐっ、力が抜けて……俺の筋肉が萎んでいく……」
倒れこんだ大男の肉体にガラテアの魔力が浸透し、彼の肉体を作り変えていく。
「身体が縮んで……いやこれは!……やめろ!」
男は下半身に違和感を感じ抵抗しようとするが、ガラテアに力を削がれ身動きがとれない。
「やめろ無くなる!」
「もう手遅れだ」
男の身体が更に萎んでいく。
「俺の身体が……」
ガラテアが足をどけると……大男は華奢で非力な女の姿に変異していた。ガラテアは先程まで男だった女を抱き起すと、女のこめかみと額に指を当てる。
「では、私に関する記憶を消させてもらうぞ……」
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