第35話 カサンドラ2

 ……ルーネは吸血鬼カサンドラの激しい攻撃をしのぎながら反撃の機会を窺う。

 赤毛の女サニアは黒い双剣でアンリの連撃を受け流していく。

 ハイディは膝をつきながら、額から流れる血を拭い、銃口を吸血鬼カサンドラに向けた。


「まだまだ!」


 ルーネの大振りの薙ぎをバックステップで躱したカサンドラにハイディの放った炎弾が直撃し、カサンドラの身体が爆炎に包まれる。

 ルーネはカサンドラから距離を取るとサニアへ走り寄り、彼女の脳天をめがけポールアックスを振り下ろした。サニアはその一撃を黒い双剣で受け止める。

 ……赤い炎から抜け出したカサンドラがルーネの背後に迫る。

 ルーネは振り向きざまに手から青い電撃を放つ……予期せぬ反撃を喰らいカサンドラが怯む。その隙をつきルーネはポールアックスでカサンドラの右手首を切り落とした。


「……やるわね」


 ……カサンドラの右腕から流れ落ちた血が黒い霧となって手首の形に変異していく。


「少し油断していましたわ……」


 カサンドラの傷口が黒い霧に包まれ右手首が少しずつ再生していく。アンリはサニアと吸血鬼カサンドラに向け減速術式で形成した幾本もの小さな氷の刃を放つ。


「肉体の再構成か、カサンドラ君、君は才能あるよ」


 サニアは双剣でアンリの攻撃を捌きながら、カサンドラに語りかける。


「ありがとうサニアさん……ん?なんだか美味しそう女の子の匂いがするわね……」


 カサンドラはそう呟くとアンリの放った氷の刃を躱しつつ民家の窓に飛び込んだ。


「逃がすか!追うぞアンリ」


 ハイディが叫ぶ、しかし魔法銃を構えたハイディの足がふらつく。


「ハイディ平気か?」


「なんとか……あたしはこのくらいなんとでも……」


 ハイディの呼吸が乱れ、顔から大粒の汗が流れている。


「この女の足止めは私が!」


 ルーネがサニアの黒い双剣をポールアックスで受け止める。


「アンリ先に行ってくれ、あたしのことは気にするな」


「わかった、ルーネ頼んだぞ!」


 アンリのに呼び掛けにルーネが頷く。


「君一人で平気かな?ルーネ君」


赤毛の女サニアが双剣でルーネを激しく攻め立てる。アンリは吸血鬼カサンドラを追って民家の中に飛び込んだ。


………


「……見つけたわ」


 カサンドラは踏み込んだ民家の寝室での若い女を見つけた。


「えっ、だっ、誰!?」


 ベッドの上で若い女は怯えた瞳で不意に現れた女吸血鬼を見つめる。若い女は突然の侵入者に動揺し身体が震えて動けない。


「つかまえた……貴女とっても美味しそうね」


 抵抗する間もなく、怯える女の首筋に吸血鬼カサンドラが喰らいつく。


「っん!…ああっ……ああ……」


 若い女の身体が痙攣し、意思のない人形のように力なくカサンドラの腕の中へ倒れこむ。


「美味しかったわ……うふふ、いいですわ……みなぎってきますわ」


 カサンドラは女の顔を優しく撫でた後、若い女を片腕で持ち上げ部屋を立ち去った。

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