第34話 カサンドラ

 ……アンリとハイディとルーネは月が陰った王都マリエスブールの夜道で吸血鬼と赤髪の女と対峙する。

 吸血鬼カサンドラはポールアックスを構えた暗黒騎士ルーネに向かって勢いよく間合いを詰めると、対するルーネは迫るカサンドラへ向け淵術を付与したダートを投擲する。カサンドラは投擲されたダートを躱し、ルーネに拳を打ち込む。


「っぐ!」


 吸血鬼の一撃を受けたルーネは苦痛を噛み殺しながら後退する。


「逃がさない……」


 カサンドラは素早く踏み込み、後退するルーネのポールアックスを掴む。ルーネはその手を振りほどこうとするが吸血鬼の怪力で押さえつけられ振りほどけない。


 ハイディの放った魔法銃の一撃が吸血鬼カサンドラに直撃し、カサンドラの身体が赤い爆炎に飲み込まれ、ポールアックスを押さえていたカサンドラの手が緩む。


「きいたか!」


 その隙にルーネはカサンドラの手を引き剥がす。アンリはカサンドラの援護にまわろうとしたサニアを減速術式で攻撃し足止めする。

 ルーネはポールアックスでカサンドラの身体を横に薙いだ……吸血鬼カサンドラの衣服が破け、血が路面に飛び散る。カサンドラは怯まずにルーネの顔をめがけて鋭い蹴りを入れる。ルーネはその一撃をポールアックスで防ぐ。


「この女!なかなか……手が痺れる」


 吸血鬼のパワーに押されルーネの足がふらつく。


「ルークスジャベリン!」


 ハイディが吸血鬼カサンドラへ光術を放つ。彼女の放った光の槍がカサンドラの身体に突き刺ささり血が噴き出す……カサンドラは顔に付いた血を拭う。


「やるじゃない……ルーネさんもハイディさんもとても綺麗で……私好みよ……魔力がたっぷり詰まってて……美味しそう」


 ルーネは再び淵術を付与したダートを吸血鬼カサンドラへ投げつける。カサンドラは投擲されたダートを払い落す。

 カサンドラもルーネの下半身に向け再び拳を打ち込むルーネはカサンドラの一撃を躱す。打ち込められたカサンドラの拳が街路の石畳が砕き、飛び散った石畳の破片がルーネの顔をかすめ傷をつくった。

 ルーネの血が流れ落ち石畳に赤い染みが生まれた。更にカサンドラはルーネの顔を目掛け蹴りを放った。


「く、なんてパワー!」


 ルーネは必死に吸血鬼の攻撃を躱す。


「ルークスジャベリン!」


 カサンドラはハイディの攻撃を華麗に回避する。ハイディが再び放った光術はカサンドラに命中せずに王都の夜闇に消えていく。


「ちっ、今度はあたらんか!」


 ……赤毛の女サニアはアンリの蹴り飛ばした氷弾を黒剣で切り落とし、アンリは減速術式で形成された氷の短刀で赤毛の女騎士に切りかかる。


「アンリ君、君もなかなかやるようだ」

 サニアは氷の短刀を捌きながら、アンリに語りかける。


「……アンタ、本気じゃないな」


「……どうかな……魔剣の疾走!」


 サニアはアンリの攻撃を受け流しながら淵術を放つ。


「!!ハイディ避けろ!」


「!」


 風切音が響き、魔法銃を構えたハイディの身体から鮮血が噴き出した。


「ほう、直撃は避けたか……」


「……ぐっ!ああっ……ごほっごほ、く……いかんな」


 ハイディは苦しそうに肩を上下させ息を切らしている。

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