第13話 淫魔の肉体

 ルースの村の宿


「ジュリアスどうした?」


 アンリは苦しそうにいる胸を押さえているジュリアスに声をかけた。


「なんだか……体がゾワゾワするんだ……おかしいぜ

いつもよりずっと激しい……クソッ、体が疼いてたまらねぇ」


 ジュリアスが顔を歪め、柔らかな女の手で下腹部と胸を押さえる。


「……でも、この女の体になっていいこともある……体の底から魔力がぐんぐん湧き出てくるんだ……感覚が敏感になって、リゾームや魔力への流れがよくわかるようになってきたぜ

あと、女湯に入れるようになったことかな、女の身体見放題だぜぇ……いやあ、いいねぇ、サウナでシェイマの女がノールアルプを介抱してるのを見てさぁ

女同士で……色々と妄想がはかどってしょうがねぇぜ……顔を赤くして、目は虚ろで、汗まみれで苦しそうに喘いでさ……というかノールアルプの奴らは暑いのが苦手なのになんでサウナが好きなんだ?マゾなのか?」


「さあ?奴らは寒中水泳も好きだよな……」

とディアス。


「あとさ、オーガの女ってすごいよな、今までよく知らなっかたが……奴ら脱いだらすごいんだなぁ、背が高くて足が長いし、胸、腰のくびれ、太もも、しなやか筋肉、体のバランスがいい……本当に羨ましい体してるぜ……」


「……ジュリアス、精神がサキュバスの体に馴染んできたんじゃないか?」

とアンリ。


「いや、体が女になってもおれは男だよ、むしろ前よりも女の裸が気になって仕方がねぇぜ」


「傭兵の世界のサキュバスは女好きで自分のこと男っぽい性格だとかいう奴、結構いるぜ……生まれながらのサキュバスは自分のことを普通の人間だと思ってる

思春期になって肉体の成長と共に自分が人間の女と違うことに気づくのさ」

 鱗に覆われたリンアルド族の大男ディアスは爪をやすりで研ぎながら応えた。


「サキュバスは魔性だけじゃなくて獣性の強いの奴も多いからな」

とアンリ。


「そういや獣性と魔性ってなんだ?まあ、見よう見まねで多少の肉体強化は使えるがなぁ、おれはちゃんとした魔術教育を受けてないからよくわからんぜ」

とジュリアス。


「……獣性と魔性か……獣性ってのは野生の本能、肉体の活力や生命力の源で獣性が強いほど、筋力、性欲、食欲、闘争心が高まっていく

魔性は……端的に言うと他者を惹きつける魔力だな

魔性が強いほど魔力と異性を惹きつける力が高くなるんだ

……獣性は個人によって強い弱いの差があるが、基本的に誰しも少なからずもっているものだが、魔性は誰しもが持ってるわけじゃなくて、魔性が全くない奴もいるのさ

綺麗で性格も悪いわけじゃないのに何故だかもてない女って稀にいるだろ?

そういう奴は魔性を全く持ってなかったりするんだ

あと、個体差ってのがあるが基本的には獣性ってのは女より男の方が強く

魔性は男より女の方がもっている奴が多い……種族でいうとシェイマとオーガの女は強い獣性をもっている奴が多いが、魔性を持っている奴は人間の女より少ないな」


「……アンリ、美人なのにもてない女は別の理由があるんじゃあないか?

魔術師や学者の類は自分の得意分野の知識で世の中を計ろうとする癖があるよな」

とディアス。


「まあ確かにそういうのはよくあるよ」

とアンリ。


「うっ!あ、あっあ、あ」


 突然、ジュリアスの顔が紅潮し、呼吸が荒くなっていく……肩が震え、呼吸のたびに胸が揺れる。


「おい、大丈夫か!?」


「すげぇ……体が熱い!」


 ジュリアスは身にまとっていた服を脱ぎ捨て、汗で濡れた肌があらわになった。……魔力を制御する術式が刻まれた下着が豊かな胸をつつんでいる。

 サキュバスの魔力がジュリアスの肉体をより蠱惑的に変異させる為、駆け巡っていく……濃厚な魔力を蓄えた乳房が呼吸の度に膨張しサキュバスの魔力を抑制する下着の束縛を打ち破ろうとする。


「……うっ、胸が……またでかくなってやがる……

淫魔は人間から生命力と欲望を吸収して肉体を強化する

この体は……おれの欲望を……吸い取ってるのか?

昔、サキュバスに襲われて死にそうになってから……うっ」


 へその周りに手を伸ばし、下腹部を苦しそうに押さえる。


「はあはあ……サキュバスのことは色々調べたんだが、サキュバスに変異すると肉体の魔力に精神が支配されると人格が変わっちまうらしいな……」


 ジュリアスはへその下を抑え、体をよじらせる。


「ああっ……うう…うっ!なんだ?これ…………さっきよりもずっと……激しい……ああっ」


「胸はただ膨らんだわけじゃない……濃厚な魔力が満ちているな」

とアンリ。


「胸が苦しい……張り裂けそうだ、熱い、熱い、体が……おかしくなる……」


 ……ジュリアスの下腹に紋章が浮き上がり、淡い光を放ちながら呼吸に合わせ脈動する。


「見せてくれ」


 アンリはジュリアスのへそ下に浮き上がった紋章に触れる。


「ああ!」


 敏感になった肌にアンリの手が触れるとジュリアスは嬌声をあげた。


「紋章が魔性と反応している……」


 紋章は淡い光を放っている。


「……淫紋か?」

とディアス。


「ああ、そうだ」


「淫紋だと……そんな……おれの身体どうなって……ああっ!」


 へそ回りの筋肉が脈動する。ジュリアスは苦痛と快楽で美しい顔を歪めながら、右手でへその下を押さえ、左手で口を押さえるも抑えきれない嬌声がこぼれ、宿の一室に響く。


「あああああ!はあはあ、うっ!!」


「淫紋が肉体と精神をサキュバスとして最適化させようとしている……ジュリアス!気を強くもてよ!減速術式が……くそっ、効きが悪いな!」


 ジュリアスの体をさらに強烈な痛みと快楽が駆け巡る。


「……ああ……おれは……もうだめだ……うぐ、あああああああ!」

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