第14話 欲望を秘めた肉体

 ……ジュリアスの瞳は虚ろで視点は宙に浮いている。

へその下に浮き出た淫紋は更に輝きを増し、肥大化していく……


「ああ……もう我慢できない……体が溶ける……熱い……気持ちいい」


 ……快楽と痛みの波にジュリアスの意識が流されていく。


「おい、ジュリアス!しっかりしろ!」


「あああ、はあはあ、ううっ!ああっ!!!」


 ジュリアスはベッドに倒れこみ、嬌声をあげながらベッドの上で体をくねらせる……へそ周りが痙攣する……豊かな胸が膨らみ脈動する。


「きつい……胸が張って苦しい……熱い熱い!」


「おい……やばいぞ!これは……」


 ジュリアスは両手で胸を抑える。胸が脈動と共に手の中でおさまることなく膨らんでいく……


「サキュバスの肉体に精神が支配されかかってる……」


 ……柔らかな肌を大量の汗が流れおちる……


「……魔瘴障壁を……展開……」


 突如、展開された魔力の障壁がアンリの手ををジュリアスの身体から弾き飛ばした。


「くっ、魔瘴障壁か!?」


 魔力で形成された黒い膜がジュリアスの肉体を包み込んでいく。


「……気持ちいい……もう……限界……」


 ……ジュリアスは魔力を制御する術式が刻まれたブラを脱ぎ捨てた……


「あああああ!!きっ、気持ちいい……」


 術式で抑え込まれていた魔力が全身を駆け巡り、背中と腰から四枚の黒い羽が現れた。濃厚な魔力の満ちた障壁の内部でジュリアスの肉体はサキュバスとして強化され変異していく……


「あああああああああ!!!」


 ジュリアスの身体が一際大きく痙攣する。


「ああっ、あっ……あっ…………」


 ……強烈な快楽と痛みの波の中、ジュリアスは意識を失った……


「……はあはあ……ウフフフ……この男も随分と抵抗していたけど……ようやく私に体を渡してくれた……最高の気分……フフ、この山賊の男の身体は中々いいわね……この男の強い獣性と肉欲は私の糧になってくれたわ」


 背中と腰から生えた四枚の黒い羽が魅惑的な肉体を包み込んでいる。

サキュバスの脳を融かすような甘美な汗のにおいが部屋に満ちていく。


「ヤバいぜ、アンリ……ジュリアスの奴、完全にサキュバスの意識に肉体と精神を支配されてやがる……」


 ……完全なサキュバスの肉体への変異。豊満な胸、くびれた腰、美しく伸びた手足、黒い翼と怪しく蠢く尻尾、肉欲を刺激する蠱惑的な肉体。


「……もう我慢する必要なんてない……リンアルドの男……逞しい身体……命を絞り尽くしてあげる……」


 黒い霧がディアスの身体を包み込み、そのまま彼を障壁の内部に閉じ込める。


「……先にリンアルドのお兄さんから相手をしてあげるわ」


「しまった!」


 アンリは障壁に手をやり減速術式で中和しようとするが、濃密な魔力で形成された障壁をなかなか打ち消すことが出来ない。


「ぬう、お?くっ!」


 ディアスの身体にサキュバスの手が触れる。


「サキュバスの肌に触れるなよ、生命力を奪われるぞ!」

アンリは叫ぶ。


「力比べなら負けないぜ!」


「……フフ、どうかしら……」


 サキュバスの魔力を秘めた胸がディアスの肌に一瞬触れた……一瞬であるにも関わらず強烈な快楽がディアスの身体を駆け抜ける。


「う、ああ…うっぐっ!くそ……しまった……力がぬける」


「……ふふふ……ねえ、力がどんどん抜けていくでしょう?気持ちいい?」


 強烈な快楽の後、虚脱感がディアスを襲う。


「しかもこの匂い……頭がおかしくなるぜ……」


 部屋に充満する甘美な匂いもディアスの力を奪っていく……


「どんどん力が溢れてくるわ……リンアルドの男って最高ね」


 更にサキュバスの力が増していく。


「あなた達二人の生命力を吸収すれば、わたしも……フフ……」


 ディアスは何とかしてサキュバスを引きはがそうとする。


「フフフ、まだ抵抗する?」


 豊かな胸が再度ディアスの身体にふれる。


「くっ、しまった!」


「もう抵抗する力がなくなってきたんじゃない?一気に吸い取ってあげる……」


 女はディアスの身体を抱きしめる。


「くそ……」


 ディアスが膝をつき、床に崩れ落ちる。


「……ご馳走様、もう、ダウンかしら」


 アンリはようやく二人を包み込んでいた障壁の中和に成功する。


「……もう遅いわ、お友達はもう動けないみたい、残念でした……ねぇ、あなたも私が全部吸い取ってあげる」


「減速術式」


 アンリは女の肌に触れ減速術式を発動させる。


「いいわ……どちらが先に力尽きるか、勝負ね」


 アンリはサキュバスの魔力を相殺する。


「へえ、なかなかやるようね……腕をへし折ってあげる……この体に気を遣って凍らせなかったのは失敗だったわね」


 ……突然、女の身体から大量の汗が吹き出した。


「なっ!なにこれ!ああっ!!」


 サキュバスが苦しみだした。


「おかしい……体の自由が……そうか、魔力が減って、肉体と精神の支配率が……っぐ、あああ……一体、あの山賊の男、私の中で……なにを……ああっ、ああっ!!」


 女は涙を流し目を泳がせる。手足は痙攣している。


「あつ、ああああ!何を……してるの……止めて、いやああ!止めて!

あああああああああ!あっ……」


 女は絶叫の後、糸が切れたように床に倒れこんだ。魔力を蓄え、膨らんでいた胸がみるみる萎んでいく……


「……はあはあ、よくわからんが、助かったのか?でも、オレもそろそろ限……」


 アンリもベッドの上に崩れ落ちた。

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