最終章 〜Goodbye my hero〜

熱いレースが繰り出され、スタートしてから20分が経過する。


 周回遅れもちらほら出てきて、トップを走る二人のペースは上がらないが、三位まで追い上げて来たMr.チャンプが、周回を重ねるごとに、少しずつ前を走る二人に追いついてきた。


『来た、来た!Mr.チャンプが遂にトップを走行する二人に追いついたぞ』

『さぁ、抜けるか?』


 レースは残り約5分!


『後、4周ぐらいでしょうか?3台揃ってデットヒート、これで勝てば今年のチャンピオンに』

『熱い、熱いレースだ』

『長年レースを観てきた私ですが、こんな熱いレースは初めてだぜ』


 トップ3台はゴールに向かって突っ走る。


『さぁ、いよいよラスト2周となりました』

『変わらず熱いデットヒート!』

『トップは大島、トッチー、Mr.チャンプ』

『おっと、ここでMr.チャンプが仕掛けるぅ!!』


 コーナーの入り口で、前を行く二人に迫る。


『抜いた抜いたぞ、アウトから2台を抜いた』

『なんとスタートで出遅れたMr.チャンプだが、ここへ来て遂にトップに躍り出たぞ』

『このまま逃げ切りチャンピオンか・・・』


 そこへ、観客席から大歓声が起こる!


『おっと速報だ!なんと、なんとベストタイムを叩き出し、追い上げて来たライダーが一台』

『ジミーだ!ジミーが来たぞ、出遅れたジミーが四位まで上がって、トップ集団の背中が見えてきたという感じか。コレはどうなる?』


 ジミーの走りは相変わらず目立たない走りだが、周回を重ねるごとに少しずつ順位を上げていた。


『速い、速い!ジミー』

『遂に前を行く三人のライダーの真後ろについた』

『本当に、誰が勝ってもおかしくないぞ』


 コントロールラインに【ラスト1周】のボードが提示される。


『2連ジャンプを飛んで・・・さぁ、今コントロールラインを通過!ファイナルラップへと突入したぞ』

『泣いても笑っても今年最後のレース』



【夢叶えて来い!ラスト1周!】


 と、坪井は感動のあまり、泣きながらジミーにサインボードを出す。


『いけーっ!ジミー、ラスト一周』


 京子も、泣きながら大声で声援を送る。


『あいつめ、いつも店でフル○ンで走り回ってる奴ですよ』

『それが、マシンに乗るとヒーローですよ』


 オーナーが感動し、社長の背中を叩きながら涙流し、ジミーに向かって指差す。


『あぁ、約束通り、夢を背負って走ってるぜ!』


 あの強面の社長が、自身が"叶えれなかった夢"を乗せて走るジミーの姿に号泣する。


 会場が一つになり、それぞれ応援しているライダーの名前を大声で呼び叫ぶ・・・


『残すコーナーはあと二つだ』


 ヘアピンコーナーを、四人のライダーが一台ずつ立ちが上がる。


『そして、Mr.チャンプ、大島、トッチー、ジミーの順に最終コーナーへ向かった』

『おぉーと!このペースだと、最終コーナーの立ち上がりで周回遅れに追いつくぞ』

『Mr.チャンプ!上手く周回遅れをパスできるかぁー?』


 MCよっちゃんは大興奮しながら実況し、観客達も手に汗を握り大声で声援を送る。


 ついに、最終コーナーへ差し掛かる・・・


『何?ここアウトから行くのか?』


 トッチーの横を抜き去るジミーに呟く。


『バカな、ツッコミ過ぎだ』


 更に大島も抜かれながら呟く。


『あっ!最終コーナーアウトから、アウトからジミーが2台をごぼう抜き』

『地元走りだ、誰もここをアウトから回らないのにジミーは行ったぞ』


 最終コーナーを立ち上がりジミーは自分の夢、オーナーやスポンサーの夢や希望を叶えるため、そして応援してくれてる人々の気持ちに応えるため、ゴールに向かってアクセルを全開にする!


『そして、そして立ち上がり、Mr.チャンプの前へ出たぞ、遂にトップに・・・』


『あーーーーー!』











 2023年11月22日 午後3時2分




 美馬モーターランドにて・・・




 ジミー 死亡






 あれから5年後・・・


『ママ!見て見て、じてんしゃ、のれたよ』

『あらぁ、すごいわね』

『でしょ?ぼく、将来レーサーになるけん』

『そっか、なれたらいいな・・・』


 と、ジュリアは言いながら、


『けど、ママはその夢応援出来んな・・・』


 子供に聞こえないようにつぶやく・・・


 “ジミー、この子はパパの背中見たことないのにレーサー目指すんやって”






 この道を通ると思い出すあなたといた頃を


 愛する気持ちは今も変わらない


 私は元気に生きてるよあなたがいなくても


 だけど寂しくて何か物足りない


 これからもずっと一緒に歩んで行くと


 そう思ってたのに


 二人で撮った数えきれないフォトグラフ


 忘れる為に消したけれども


 初めて撮ったこの一葉


 これだけはどうしても消せなくて


 この時期になると思い出すあなたと出会った頃を


 初めて結びあった夜 雨が降ってたね


 街の人混みの中タクティクスの香りが


 ふと振り返るあなたがいるのかと


 些細なことで私からさよならした


 後悔してるずっと


 二人で撮った数えきれないフォトグラフ


 忘れる為に消したけれども


 初めて撮ったこの一葉


 これだけはどうしても消せなくて


 ここに来ればあなたに逢えるかもと


 この言葉を伝えたくて


 I'm sorry about that time


 I still love you so come back.


 二人で撮った数えきれないフォトグラフ


 忘れる為に消したけれども


 初めて撮ったこの一葉


 これだけはどうしても消せなくて


 ここに来ればあなたに逢えるかもと


 この言葉を伝えたくて


 I'm sorry about that time


 I still love you so come back.






 《消せないフォトグラフ》をジュリアは聴きながら・・・






 “ジミー聞こえてる?あなたの血は、ちゃんとこの子に引き継いでいるよ”






 〜Goodbye my hero〜






 《完》

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【Goodbye my hero】 ジミー @845jimmy

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ