第十二章 開幕戦に向けて

 全日本モトクロス選手権の復帰に向け日々、練習・トレーニング・マシンテストを行い、開幕戦まであと、数週間となった。


 徳島県のサーキット、《美馬モーターランド》にて

 一台のマシンの音がサーキット場に響き渡る。


『セッティングはどうだ?』


 坪井が尋ねる。


「ダメです。ジャンプの着地後はフラつくし、コーナーの立ち上がりでパワーが落ちます」

『けど、タイムは出てるよ』


 京子がタイム表を見せ、


「セッティングさえ決まればトップ狙える」


 ジミーはヘルメットを脱ぐ。


『まぁ・・・よくここまでマシン仕上げれたな』

『けど、これではファクトリーマシンに勝てない』


 坪井と京子が話をしながら整備し始める。


 そして、開幕戦の4日前・・・


 出発の準備をしている所に


『ジミー話があるの・・・』


 ジミーの彼女、ジュリアが言い出す。


 高校生の時からジミーと交際していたジュリアは、彼が五年前レースを引退した後も支えていた。


 そんな彼女は高校卒業後、県内の大学へ進学して日々過ごしていたが、ある日、友達の紹介でアルバイトとしてキャバクラへ行くと人気が出てそのままキャバ嬢となり現在に至る。


「どしたん?」

『レース前でごめんやけど、別れて欲しいの・・・』


 と、泣きながら


『私も、キャバ嬢してるし、ジミーがホストしようがなにしようが浮気さえしなければいいの』

『だけど、レースしてるジミー・・・』

『心配なの。見ていられない』


 ・・・・・


『五年前ジミーがレース辞めるって言った時、凄く嬉しかったの。だからまたレースをするのならジミーの夢・・・応援できない』


 沈黙が続く・・・


「分かったよ。ごめんな!」

「だけど夢を諦められないんだ・・・今までありがとう」


 と、言い、出発の準備を終え、


「じゃぁ、行ってくるよ。元気でさよなら」


 そう言うと車で走り去る。


 泣きながらジュリアは手を振り、


『やっぱりジミーは、私よりマシンを愛しているのね・・・』


 と、つぶやく・・・

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