第六章 悔し涙も汗に変えて
ホストクラブに正式に入店し、ジミーの新たな人生が始まった。
ヘルプではそこそこ人気があったのだが、凄く厳しい世界であり、
指名客はもちろん、「自分のお客様」も掴めないまま3ヶ月が過ぎようとしていた。
他の同期や、後から入店した後輩などは数週間で指名客を取り、段々と売れていく。
なんといっても彼は、モトクロス一筋で生きてきて、世の中を知らない男!
でも、彼は諦めずできることから始めた。
テーブルマナーや接客マニュアルの見直しをしたり、話し方講座を学んだり、どんなことが流行っているかなど。
ホストの世界というものは、指名客を取り売上てなんぼの世界。
しかし、ある事に気付く。
"売上を上げてなんぼなのはわかったが、一人だけで売上を上げるのには限界がある。個人の売上ではなく、店自体の売上を上げ、さらに盛りあげるにはどうしたらいいのか?”
と・・・
そこで、彼が考えたのは開店準備や店の買い出し等の雑用をする。
指名客が取れないのなら他のメンバーがもっと客に営業出来る環境を作った。
そんな事をしていた時である。
珍しく常連のお客様が、男性の方を連れて来店した。
ホスト達が次々と挨拶をして行き、少し遅れ最後にジミーが挨拶しに行くと
『君・・・名前は?』
と、男性客が尋ねる。
「ジミーと申します。よろしくお願いいたします」
『そうか、ジミー君。席着いてくれるかね?』
「あ、はい。ありがとうございます」
「僕で良いのですか?」
『君がいい!指名出来るかな?』
「え!本当ですか?嬉しいです。」
と、席に着く。
「改めて、いらっしゃいませ。本日はご来店ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
初めての指名、しかもそれが男性客、緊張し挙動不審になりながら接客をする。
『なんで君を指名したか分かるかな?』
「いや・・・分からないです」
「どうしてですか?」
『さっき、ここのホスト達、挨拶に来ただろ?君もそうだけど、だけど僕の目をちゃんと見て挨拶したの君だけだったから・・・』
そう言い、
『実は、僕も数年前歌舞伎町でホストしててこう見えてナンバーに入ってたんだよね。ま、厳しい世界だからナンバーワンにはなれなかったけど、ヘルプではナンバーワンだったんだぜ』
と、笑いながら話す。
流石、元ホスト!話が上手い、客として来ているのに席を盛り上げている・・・
『ジミー...ホストの世界、いや水商売の大事な事、何か分かるか?』
「お客様を楽しませる事ですか?」
『流石、分かってるね・・・半分正解だな』
「ありがとうございます。後の半分はなんですか?」
『この世界、お金儲ける為にしてるでしょ?もちろん、それは大事な事だけどお金を追ってはいけない・・・』
そう言いグラスをテーブルに置く。
『さっきから周りの他のホスト見物したけど、ジミーはその辺の事分かってるみたいだね?まずは、お客様を楽しませてなんぼでしょ?そうすると後からお金はついてくるから。明日ナンバーワンなっても追ってるだけだと直ぐ落ちる』
更にジミーの眼を見つめながら
『この世界以外もそうだけど、長く続けれる方がいいでしょ。だから後の半分は義理人情を忘れない事・・・まぁ今後のジミーの活躍楽しみにしているよ!』
男性客は水商売のイロハを教えると、また話題を変え、席を盛り上げる。
入店してから二時間程経った頃、
『そろそろ帰る。その前に僕が初指名の客って言ってたよね?』
『じゃ、今宵の出逢いの記念にシャンパンおろすよ』
と、言いドンペリを注文する。
初指名、初シャンパンの1日となった。
めっちゃ嬉しかったジミー・・・
何かこの世界の答えが見えて来たようで
"新たに一から夜王目指す”
と心に誓う。
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