第5話 王樹討伐戦

 わたしは、ゆめを見ていた。夢の中で、ユウコとばれていた。

 不思議ふしぎな夢だった。ふかい森の中で、一振ひとふりの日本刀にほんとうを手に、植物しょくぶつのモンスターとたたかう夢だった。

 毎晩まいばん、同じ世界のゆめを見る。同じ夢の世界を、たくさんの人が共有きょうゆうしているともく。何ものかの啓示けいじだとか警告けいこくだとか陰謀いんぼうだとか、危険視きけんしする大人もいる。

 でも、普通ふつうの中二女子のわたしには、ゲームであそぶくらいの感覚かんかくしかなかった。


   ◇


 わたしは、ふかい森にいる。DFとぶ、不思議ふしぎゆめの中の森である。

 ピンク色の長いかみきあげ、上を見あげる。しげあいだから、明るいす。青い空が見える。

 ふくは変わらず、白いセーラー服と、こん色のプリーツスカートと、お気に入りの赤いスニーカーである。この格好かっこうが、やっぱり気が引きしまる。

「ユウコさん。たよりにしています」

 みじか黒髪くろかみに白いがくランの女性が、凛々りりしい微笑びしょうで声をかけてきた。現実げんじつ世界とは髪型かみがた服装ふくそうちがうけれど、よくよく見れば、作戦さくせん会議かいぎに来ていた大学生くらいの人だ。

「う、うん。頑張がんばる」

 わたしは緊張きんちょう気味ぎみうなずいた。こしさやに差したかたなつかにぎる手が、すこふるえていた。

 これから、王樹おうじゅひきいるモンスター本隊ほんたい突撃とつげきをかける。所属しょぞくは、正面しょうめんから突撃とつげきしててき本隊を引きつける精鋭せいえい部隊ぶたいである。

 隊長たいちょうは、この白い学ランの女性がつとめる。見た目のまま、『はくラン隊長たいちょう』とばれる。短髪たんぱつで学ランの女性という姿すがたに、中性的ちゅうせいてき印象いんしょうける。

 精鋭せいえい部隊の人数にんずうは、十人だ。

 モンスターどもに発見はっけんされづらいように、木々がおおくて見通みとおしのわる場所ばしょ待機たいきしている。ほか部隊ぶたいもすでに、部隊ごとに配置はいち地点に待機たいきしているはずである。

 精鋭せいえい部隊ぶたいではあっても、戦闘せんとう能力のうりょくたか精鋭せいえいは、わたしふくめて五人だ。トウカふく精鋭せいえい五人が、攻撃こうげき本命ほんめいになる左翼さよく部隊ぶたい移動いどうした。

 入れわりで左翼部隊から移動いどうしてきた五人は、精鋭せいえいぶにはよわい。きん出てつよいわたしがあばれる作戦さくせんなのだから、問題もんだいはないといている。どうせ、精鋭せいえいと呼ばれる人たちですら、わたしとくらべると弱い。

われら九人は、ユウコさんを全力ぜんりょくでバックアップします。まえだけを見て、思う存分ぞんぶん、力をるってください」

 はくラン隊長たいちょうが、凛々りりしく微笑びしょうした。すらりと背筋せすじびて、格好かっこよかった。信頼しんらいあたいする人だと、具体的ぐたいてき理由りゆうがなくともかんじた。

「……うん。よろしく」

 少しだけ、緊張きんちょうほぐれた。つかにぎる手のふるえがとまった。

 レイトとかシバタとか、こういう人たちを見ていると、単純たんじゅん腕力わんりょくだけが力ではないのだな、と思う。

みなさん、リーダーの指示しじが来ました。作戦さくせん開始かいしです。行きましょう!」

 白ラン隊長を先頭せんとうに、精鋭せいえい部隊ぶたいうごき出した。王樹おうじゅひきいるてき本隊ほんたいとの、総力戦そうりょくせんが始まったのだ。


   ◇


 森の中を、精鋭せいえい部隊ぶたい十人ですすむ。木々のあいだを、姿勢しせいひくく、低木ていぼくや草むらにかくして、小走こばしりでいそぐ。

みなさん、ここから突撃とつげきします。てき一部隊いちぶたいはしを一気に突破とっぱして、たぶん王樹おうじゅ直属ちょくぞくぼうちモンスター部隊の、右前みぎまえから突入とつにゅうすることになるそうです」

 白ラン隊長たいちょうが、凛々りりしくげた。

 いよいよ、始まる。ミカのかたき王樹おうじゅたたかえる。

 かたなつかにぎる。鯉口こいくちを切る。かがひざに力をめる。

「さあ、突撃とつげきします!」

 白ラン隊長がこぶし前方ぜんぽうへとけ、号令ごうれいをかけた。

 同時どうじに、わたしはけ出した。

 木々のあいだうようにける。ぎりぎりまでてき発見はっけんされないように、姿勢しせいひくたもつ。

 いた! の低いいばらしげみみたいな、とげだらけのほそえだからみ合うモンスターだ。

 かずおおい。密集みっしゅうして隊列たいれつんで、通過つうか困難こんなんな広い障害物しょうがいぶつとなっている。

 だが、関係かんけいない。そんなもので、わたしはとめられない。

 さやから刀をく。りあげ、しげみみたいなモンスターに振りおろす。何体ものモンスターがえる。

 振りおろしたやいばひるがえし、りあげる。さらに何体ものモンスターが消える。

 みちができた。モンスターの集団しゅうだんはしに、さきへとすすめる空間くうかんができた。

 もともと、配置はいち有利ゆうりを取って消耗しょうもうおさえて、この集団は短時間たんじかん突破とっぱする作戦さくせんだ。ここで苦戦くせんするようでは、てき本隊ほんたいぼうちモンスター集団にはてない。王樹おうじゅには絶対ぜったいとどかない。

「お見事みごとです! さすがユウコさん!」

 後方こうほうから、白ラン隊長たいちょううれしげな称賛しょうさんこえた。

 精鋭せいえい部隊ぶたいの九人は、すこおくれてついてくる。わたしのバックアップのためであり、わたしのスピードについてこれないせいでもある。わたしとくらべて、他の人たちはみんなよわい。

 走りをゆるめず、次にひかえたぼうちモンスターの集団しゅうだんへとける。

 見たことのある、上端じょうたんとがったの高い木のみきみたいなモンスターである。たくさんならんでいる。木々もてきおおくて、並びのはしは見えない。

 足は、あるのかないのか分からない。はなく、うでみたいなふとえだが一本だけえる。枝の先には長くて太いやりみたいな木のぼうにぎる。

 おくにも並んでいる。木もてきおおくてじって、何列なんれついるのか分からない。たぶん、王樹おうじゅ分厚ぶあつく守っている。

「はあぁぁっっ!!」

 ぼうちモンスターの集団の、右前みぎまえかどへとむ。てき反撃はんげきはまだない。

 相手あいては、ぼうつ一本しかないえだ右腕みぎうで方向ほうこうびているから、相手の左腕ひだりうで方向からめれば初動しょどうおくれる。不意討ふいうちに成功せいこうした今なら、ぼうけられるまえめる。ここまでは、作戦さくせんどおりである。

 ぼうちのかたく高いみきに、かたなりおろした。カンッ、とかたい音がして、幹がけて、ぼう持ちが一体消えた。

 ためしに、刀を大きく横薙よこなぎに振りく。二体の幹をいて、しかしきずあさいのか、消えない。

 やはり、一振ひとふりで複数体ふくすうたいたおせる相手ではなさそうだ。かたくて太くてつよいのだ。

ぼうちをこうも簡単かんたんたおすとは、お見事です! 後方こうほうとフォローは我々われわれまかせて、ユウコさんは思う存分ぞんぶんあばれてください!」

 いついてきた白ラン隊長たいちょうたからかにげた。たおしきれなかったぼうち二体に、精鋭せいえい部隊ぶたい四人がむらがった。

 ぼう持ち二体がとどめをされて消えた。これなら、たおしきるかどうか、みたいなこまかいことを気にせずにりまくれそうだ。

「ありがとう!」

 わたしも高くこたえて、てき集団しゅうだんの中へとむ。周囲しゅういぼうちを手当たり次第しだいく。きずあさかろうが消えなかろうが気にせず、ひたすら走って、ひたすら刀をりまわす。

 当然とうぜんてきうごき始めた。こっちに向けてめてきた。

 森に、木のみきが立ち並ぶ。木々のあいだめて、ぼうつ高い木のようなモンスターどもがせる。威圧感いあつかんすごい。

 戦闘せんとう能力のうりょく自信じしんがあっても、恐怖きょうふかんじる。

 モンスターの体高たいこう自体も見あげるほどたかい。その高い頭上ずじょうの、さらに高くに木のぼうりあげ、かかげる。かずおおく、鋭利えいり先端せんたん無数むすうに向けてくる。

 でも、恐怖きょうふなんかにはけない。負けられない。

 ぼうちモンスターどもの隙間すきまから、王樹おうじゅが見える。木のみきからみ合う胴体どうたいに、まれた王冠おうかんっている。わたしの心に、親友しんゆうのミカを消されたいかりが再燃さいねんする。

「うあああぁぁぁぁ!」

 眼前がんぜんぼう目掛めがけて、袈裟懸けさがけにかたなりおろした。力尽ちからずくで、となりの木のみきごといた。

 力強ちからづよぶ。力いっぱい刀を振る。力のかぎあばれる。

 ぼう持ちモンスターどもが、いよいよあつまってくる。ぼう鋭利えいり先端せんたんを、わたしに目掛めがけてき出す。鋭利えいり先端せんたん無数むすうに並んで、かべとなってせまる。

「その程度ていどでっ!」

 ジャンプする。木のみきりあがる。ぼうかべえ、集団しゅうだんびかかり、落下らっかいきおいをせて、ぼうちの一体をななめに両断りょうだんする。

 また一体消した。たおした。かず把握はあくできないほどおおぼう持ちモンスターの、一体を消した。

 これはたしかに絶望的ぜつぼうてきだ。とてもじゃないが、王樹おうじゅまで辿たどける気がしない。レイトの言っていたとおりだ。

「くぅっ……」

 わたしはくやしさにうめいた。王樹おうじゅはトウカにまかせるしかなさそうだった。


   ◇


 トウカはしげみのかげかがみ、かくれていた。

 左翼さよく部隊ぶたいになる。左翼さよく部隊のもともとの隊員たいいんが五人と、精鋭せいえい部隊から入ったトウカふくめて五人の、合計十人の部隊である。

 精鋭せいえい部隊が右側みぎがわからぼうちモンスター部隊に突入とつにゅうする。ぼう持ちモンスターが精鋭せいえい部隊ぶたいがわるから、左翼さよく部隊のまえてきの守りがうすくなる。てきの守りがうすくなったところに左翼さよく部隊が突入する。

 そういう作戦さくせんである。

 シバタ経由けいゆのレイトの突入とつにゅう指示しじつ。モンスターどもに発見はっけんされないように、いきひそめる。

 一発いっぱつ勝負しょうぶだ。失敗しっぱいすれば、おおくの被害ひがい敗走はいそう確定かくていするのだ。

 成否せいひはトウカにかかっている。責任せきにん重大じゅうだいである。

 自信じしんはある。現実げんじつ世界せかいではおしとやかにそだったトウカも、DFでは積極的せっきょくてき自信家じしんかになれる。DFを経験けいけんした今では、現実世界でも積極的せっきょくてきになりつつある。

 トウカ自身じしん、自分の変化へんかうれしく思う。多くの友だちができたことも、うれしい。DFに来て良かったとかんじる。

「さあ、皆様みなさま突撃とつげき指示が来ましたわ。行きますわよ!」

 トウカは立ちあがり、先頭せんとうに立ってけ出した。

 木々のあいだける。

 すぐに、低木ていぼくみたいなモンスターの集団しゅうだんと、ぼうちモンスターの集団があらわれた。並ぶ木々と並ぶモンスターで、みちふさがれていた。

 しかし、守りがうすい。モンスターどもが、トウカたちに背中せなかを向けて、反対側はんたいがわにいるユウコたち精鋭せいえい部隊ぶたいほうへと移動中いどうちゅうだとかる。

 王樹おうじゅ姿すがたも見える。ちかくはない。木々とぼう持ちモンスターの隙間すきまから、木のみきからみ合う胴体どうたいと、まれた王冠おうかんが見える。

 とおくもない。十分じゅうぶん射程しゃていないだ。

「トウカさん! 二列にれつ、切りひらきます!」

 六人がトウカのまえけ出た。

 トウカは足をとめた。

 低木モンスターに六人がびかかる。二体×かける二列がえる。

 正面しょうめんからぶつかるなら、数百体すうひゃくたいいるてきがわには、四体なんてるにらない被害ひがいだ。被害ひがいとすら認識にんしきされないだろう。

 しかし、この状況じょうきょうでの二列、たったすうメートル近づけることが、トウカには大きな意味いみつ。

「行きますっ!」

 トウカは右手にやりにぎりしめた。先端せんたん鋭利えいりぎん色の細長ほそなが金属きんぞくぼうに、にぎりの凹凸おうとつだけをった、なめらかでうつくしい投げやりだ。

 まれたきん色の長いかみかがやかせ、赤いビキニアーマーをらし、モンスターの消えた空間くうかんけ込む。やりにぎ右腕みぎうでりかぶり、左足をつよむ。自身の全身ぜんしんげ出すように、木々の隙間すきまから見える王樹おうじゅ胴体どうたいの中心を目掛めがけて、投げやり全力ぜんりょくで投げる。

「たぁぁぁっっっ!!!」

 はなたれたやりが、一直線いっちょくせんんだ。重力じゅうりょく空気くうき抵抗ていこう完全かんぜん無視むしした直線ちょくせん軌道きどうで、にすらかすらず、森の隙間すきま完璧かんぺき通過つうかし、高速こうそくで、たか風切かぜきおんで、木を穿うが甲高かんだかひびきで、王樹おうじゅさった。

 トウカには自信があった。この近距離きんきょりなら確実かくじつ仕留しとめられると自負じふがあった。

「……えっ? そんな……」

 呆然ぼうぜんとする。やりの、先端せんたん部分ぶぶんしかさっていない。とてもじゃないが、胴体どうたい中央ちゅうおうには到達とうたつできていない。

 数百すうひゃくメートル先のかたいモンスターすら、正確せいかくかつ容易ようい貫通かんつうする投擲とうてきだ。まさか数十すうじゅうメートルの距離きょりの相手に、ろくにさりもしないなんて思いもしなかった。

 丸鋸まるのこみたいな円盤えんばんが、さったやりねあげる。ぎん色のやりは、空をおおみどりの中へとび、ガサガサとらして、ちて、地面じめんき立つ。

作戦さくせん失敗しっぱいです! トウカさん、すぐに撤退てったいしてください!」

 仲間なかまたちのあせこえこえた。モンスターどもが、きをえてトウカたちへとせまりつつあった。

 トウカは、失意しつい放心ほうしんしたまま、うごけずにいた。


   ◇


 わたしは、ちょっとおどろいた。きっとモンスターどもには個々ここ意思いしなんてないんだろうな、と漠然ばくぜんかんじていた。

 トウカのやり王樹おうじゅさった直後ちょくごに、すべてのモンスターが向きを変えた。ユウコたちの周囲しゅういのモンスターどもすら、眼前がんぜんのユウコたちを無視むしして、トウカたち左翼さよく部隊ぶたいがいるであろう方向ほうこうへと移動いどう開始かいしした。

作戦さくせん失敗しっぱいです! トウカさん、すぐに撤退てったいしてください!」

 左翼さよく部隊のだれかの声がこえた。やりさったはずの王樹おうじゅは、健在けんざいだった。

 となれば、わたしがやるべきことはまっている。

 跳躍ちょうやくする。木のみきって、さらに高くぶ。お気に入りの赤いスニーカーでぼうちのえだみ、ピンク色の長いかみと、白いセーラーふくと、こん色のプリーツスカートを風になびかせ、力いっぱいびあがる。

 木のみきからみ合う王樹おうじゅ胴体どうたいへと着地ちゃくちした。できると思った瞬間しゅんかんに、体がうごいていた。そして、できた。

 日本刀にほんとう両手りょうてにぎり、りあげる。王樹おうじゅけて、一直線いっちょくせんに、渾身こんしんの力で振りおろす。

「うあああぁぁぁっ!!!」

 からみ合うみきの一本を両断りょうだんした。

 れる。確信かくしんする。このまま斬りつづければ、王樹おうじゅたおせる。

 振りおろしたやいばひるがえす。右上へと斬りあげる。

 からみ合うみきべつの一本を両断した。

「……っ?!」

 最初さいしょに両断したみきが、つながった。切断面せつだんめん同士どうしが引っついて、きずも消えた。

「くっ……」

 日本刀を袈裟懸けさがけにりおろす。引っついたみき両断りょうだんする。

 二本目に両断した幹が引っついた。

「ちょっと、それっ……」

 振りおろした刃をひるがえす。右上へとりあげる。引っついたばかりの二本目のみきを両断する。

 一本目の幹が、またつながった。あっと切断面せつだんめん同士が引っついて、きずも消えた。

「ズルいっ!」

 不意ふいんできた丸鋸まるのこを、かたなはじく。

 力負ちからまけして、王樹おうじゅの上からとされた。地面じめん着地ちゃくちし、しゃがみんだ。

 ダメだ。今のわたしの力では、王樹おうじゅたおせない。

 何十本もみきからみ合う胴体どうたいの、幹の一本をるうちに幹の一本が引っつく。何百回斬っても、胴体どうたいの中心にやいばとどくわけがない。

 たおすには、何かべつ手段しゅだんかんがえなければならない。

「ユウコさん! 撤退てったいしましょう!」

 背後はいごから、はくラン隊長たいちょうこえこえた。いて、凛々りりしかった。

って。まだ、何か方法ほうほうが」

 わたしはかえった。みんなの背中せなかが見えた。精鋭せいえい部隊ぶたいは、モンスターどもに完全かんぜん包囲ほういされていた。

 蒼褪あおざめる。

 ぼうちモンスターどもが、周囲しゅういかこみ、容赦ようしゃなくぼうを向けてくる。わたし自身じしんかくほか隊員たいいんたちは長くはもたない。

「わっ、わたしが、突破とっぱこうひらく! みんなは、そこから脱出だっしゅつして!」

 みんなのまえる。脱出路だっしゅつろを切りひらくべく、刀をかまえる。

「こうなっては、全員ぜんいん無理むりです。ユウコさん一人だけでも、包囲ほういけてください」

 白ラン隊長が即答そくとうした。

「えっ? でもっ、こうなったのは、わたしが勝手かって王樹おうじゅ突撃とつげきしたからだしっ」

 わたしは、動揺どうようして、り向いた。自分がたくさんの犠牲者ぎせいしゃを出す原因げんいんになる、と恐怖きょうふした。

「この作戦さくせん失敗しっぱいすれば、てき警戒けいかいして、次の王樹おうじゅ討伐とうばつはさらにむずかしくなります。だから、突撃とつげき判断はんだんただしかった。この作戦の成功せいこうのために、すべてのチャンスに挑戦ちょうせんしてしかるべきでした」

「それにどうせ、こっち九人をたばねてもトウカさんやユウコさんよりよわいですよ。二人なくして王樹おうじゅたおせない。他の全員ぜんいん犠牲ぎせいになっても二人だけはのこらせよう、ってみな覚悟かくごめちゃってます」

うしろは守ります。まえだけを見て一人だけでも脱出だっしゅつしてください」

 九人が、口々くちぐちさけぶ。わたしにつよ信頼しんらい言葉ことばける。

 わたしは何も言い返せなくて、くちびるんで、みんなに背中せなかを向ける。

「ごめん、みんな! ごめん!」

 眼前がんぜんぼうちモンスターにりつけた。一刀いっとうで消した。

 り返るのがこわくて、まえへとひらくことしか、前へとはしることしかできなかった。



少女しょうじょかたなふかもり 第5話 王樹おうじゅ討伐戦とうばつせん/END

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