第5話嫁さんより千茶が先だった

2021年の11月某日。

その日は朝から体調が悪かった。

前日のクリニックでの血液検査は最悪で、仕事は失業中であったので、ベッドに横になっていた。

得体の知らない筋肉痛と目眩。

いつもの事なので、我慢していたが状況は好転せず、嫁さんに電話をした。

嫁さんは仕事中は、電話にでない。

救急車を呼ぼうとしたが、2日後に母が九州の実家を処分して名古屋の僕の家にしばらく住む段取りだったので、誰か母に自宅のカギを渡せなければいけない。

頭を回転させて、千茶に相談した。

千茶は直ぐに大阪から名古屋まで来てくれて、歩いて15分の大学病院までタクシーで送ってくれた。

千茶が付き添い、血液検査をしてベンチで待つものキツいので、ベッドに横になり結果を待った。

3時間程、ベッドに寝ていると医師が現れ、入院してもらいます。と、言われた。

病名はまだ、伝えられていない。


僕はそのまま入院して、千茶に母の受け入れを翌日にしてもらい、入院の道具、着替えを持ってきてもらった。

点滴をしていると、医師が現れ、

「水中毒と、横網筋融解症です。意識があって水中毒で運ばれたのは初めてです」

と、言っていた。

僕は水を当時、1日10リットル飲んでいた。

その日から、1日1.5リットルに制限された。

医師と少し喋り、僕は間も無くして気を失った。

起きたのは、2日後の夕方。

何とか嫁さんと連絡が取れたが、母もいるし入院している事だけ伝えた。

もし、千茶がいなかったら病院に行かず気を失って死んでいたかも知れない。

低ナトリウム血症(水中毒)は、それほど危険な病気なのだ。

千茶は僕の命の恩人なのだ。

母も初めて千茶の存在を知り、有り難いと言っている。

それから、羽弦家と千茶は太いパイプで繋がれたのである。

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