第4話怒らない女

千茶せんちゃに対して僕は酷いと思う。11歳年上の千茶に向かい、

「ババア」、「バカ」と、暴言を吐く。

もちろん、冗談で……。

しかし、逆なら僕は怒っていたであろう。

この前、兎陀とだ君と飲んでいたときの発言に、

「お前は、馬鹿にしてんのか!」

と、彼の発言を嗜めた。

千茶はずっと笑っていて、絶対に怒らない。

の恩人なのに、僕は千茶を苛める。

だが、嫌われたくない気持ちがあるので、言い過ぎたかな?と思うと謝っておく。

しかし、数秒後、また酷い言葉を吐く。

千茶は名古屋にわざわざ来て、楽しいのだろうか?

でも、何回も来ると言う事は、楽しいからだろうが、本人に聞くのが一番手っ取り早い。


隣の千茶に尋ねると、名古屋は楽しいらしい。

何故、彼女はここまで僕と一緒に酒を飲むのか?

もう、お互いにいい歳こいて偏差値を競争したり、例えば『ピグマリオン効果』とは何か?と問題を出したりして、答えられたら悔しいと思う相手と深夜まで酒を飲み、そういいつつもお互いを認め合う仲間に、友情が湧くのは当然至極の様に思える。

いちいち勘に触る相手と言いながらも、実力を認め合う。

僕は千茶と知り合って良かったと心から思う。


千茶がもし、希望通りの性に生まれていたら、きっと良い奥さんになっていただろう。

だが、たら、れば、は関係ない。

このままでも、きっと良い奥さんになってしまうだろう。

男に左右されるが。

でも、パートナーを彼女が見付けたら、もう名古屋には来てくれないだろう。

僕は千茶を独占しては、いけないのだ。

千茶の幸せを祈っている。

この人は、幸せになるべきだ。

名古屋に滞在している最中は、出来るだけ千茶を苛めよう。

僕は千茶に友情以上の思いがあるのは間違いない。

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