第4話怒らない女
「ババア」、「バカ」と、暴言を吐く。
もちろん、冗談で……。
しかし、逆なら僕は怒っていたであろう。
この前、
「お前は、馬鹿にしてんのか!」
と、彼の発言を嗜めた。
千茶はずっと笑っていて、絶対に怒らない。
あの事件の恩人なのに、僕は千茶を苛める。
だが、嫌われたくない気持ちがあるので、言い過ぎたかな?と思うと謝っておく。
しかし、数秒後、また酷い言葉を吐く。
千茶は名古屋にわざわざ来て、楽しいのだろうか?
でも、何回も来ると言う事は、楽しいからだろうが、本人に聞くのが一番手っ取り早い。
隣の千茶に尋ねると、名古屋は楽しいらしい。
何故、彼女はここまで僕と一緒に酒を飲むのか?
もう、お互いにいい歳こいて偏差値を競争したり、例えば『ピグマリオン効果』とは何か?と問題を出したりして、答えられたら悔しいと思う相手と深夜まで酒を飲み、そういいつつもお互いを認め合う仲間に、友情が湧くのは当然至極の様に思える。
いちいち勘に触る相手と言いながらも、実力を認め合う。
僕は千茶と知り合って良かったと心から思う。
千茶がもし、希望通りの性に生まれていたら、きっと良い奥さんになっていただろう。
だが、たら、れば、は関係ない。
このままでも、きっと良い奥さんになってしまうだろう。
男に左右されるが。
でも、パートナーを彼女が見付けたら、もう名古屋には来てくれないだろう。
僕は千茶を独占しては、いけないのだ。
千茶の幸せを祈っている。
この人は、幸せになるべきだ。
名古屋に滞在している最中は、出来るだけ千茶を苛めよう。
僕は千茶に友情以上の思いがあるのは間違いない。
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