第5話 普通に生きたいだけ

「えーっと。」

アメリアは早速紙を取り出し、メモを書いていた。


内容はこうだ。

“公爵様と話がしたい。できれば二人で。日時はそちらが決めてほしい。”


そして、午後八時アメリアの部屋に侍女が来てメモを受け取った。


早く返事が来るといいな。

♢♢♢


「ジョセフ様。先程アメリア様からメモを受け取りました。こちらでは処理できない内容でしたのでそちらにお渡ししたいのですが。」

午後八時過ぎ。

執事長室で今後の予定を確認していたところ一人の侍女がやってきた。


「おや。アメリア様がこちらで処理するようなメモをお書きになられたのですか?これまた珍しい。」

ジョセフは自慢のちょび髭を撫でながら不思議に思った。

ジョセフはフローレンス公爵家の執事長でもあり、公爵であるテオドールの側近だ。


フローレンス公爵家の使用人は主に二つに割れている。

一つは侍女達と庭師、専属料理人。


もう一つはフローレンス公爵家当主テオドールの側近及び護衛騎士だ。

ジョセフ率いる『テオドールの側近チーム』はフローレンス公爵家の重要な情報に深く関わっている。


今までアメリアのメモは侍女長率いる『生活組』が処理していた。

『生活組』が処理できない内容とは一体どういう物なのだろうか。


「、、、公爵様と面会?」


「アメリア様の様子は通常通りでした。」


「、、そうか。分かった。こちらで処理する。」


「かしこまりました。、、それでは失礼致します。」


扉が閉まり、ジョセフは一人で頭を抱えていた。


なぜ、今更?

いや、それよりも公爵様が面会を受けてくれるだろうか?

そもそもアメリア様のことなどもう忘れているかもしれない、、。


「、、、、、はぁ。」


ジョセフは全て明日の自分に丸投げすることにして眠った。



♢♢♢


メモを渡した数日後、アメリアに一通の手紙が届いた。


「公爵から!」


この前渡したメモの返事が届いたのだ。


アメリアはドキドキしながらペーパーナイフで封を切り、手紙を読んだ。


“明日の午後二時ティールーム。”




「短っ!?」


アメリアは面会出来ることよりも文の短さに目がいってしまったのだった。

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