4年生
今日は、4年生になって大阪の小学校に初めて行く日。
ママの行ってたのと同じ小学校に行く!
「いってきまーすっ!」
「いってらっしゃーい!初日、大事やからね~」
「は~いっ!」
「みんなを笑かしたれーっ!あやめっちー」
「うんっ!わかったー!」
☆
「パリから来ました~!よろしくお願いします~」
転校初日、教室で自己紹介した。
「うおーっ!パリなんやあー」
って、みんな驚いている。
4年雪組になった。
この小学校は、月組、雪組、花組っていうクラスだ。
いいなあ!って思った。
数字より、覚えやすい!
雪組って覚えればええんやから!
しかも、なんとなく風流だ。
☆
小学校から帰って、ママといっしょに商店街を散策した。
そしたら、呉服屋さんのお店の前で、女子2人、こっちを見て笑っている。
「あれ?あの2人、もしかして、同じクラスの女子なんかな~?4年雪組の...」
ってママに言ってみた。
「あ、そうかもなー!2人に聞いてみる?」
「え~、今はええわ~、明日、学校に行って同じ雪組の教室にいたら、同級生なんやろなっ」
「恥ずかしいの?」
「え~?...だって、むこうはわかってるけど、こっちからはわからへんねんから...」
「そりゃそやわ!ま、明日学校行けば、わかるしな」
「そやな」
☆
「よしっ!今日も、新しい学校やあああ!いくでー!」
そう思いながら、気合いをいれて、翌朝、学校に行った。そしたら、なんと!やっぱり、女子2人、同じ雪組の教室にいた!
教室に入って行ったら、2人の女子、こっちを見て笑っている。
「おはよう~」
って言ってみた。
「あ、おはよう~」
って返ってきた。
なんか、めっちゃ嬉しい!もう、転校して来ていきなり仲良しの友達できたみたいで!
呉服屋さんの優奈ちゃん。
そして、クラシックバレエをやってる香絵ちゃん。
「ゆーにゃん」「かえっち」って呼んで!って言われた。
「あやめっち」って呼んでね!って言った。
「あやめっちか~!そしたら、うちも『ゆなっち』にしよう!」
って言って、「ゆーにゃん」から「ゆなっち」に、呼び名を変えていた。
ゆなっちは、その日、ずっと、あやめっちのそばに、ぴったりとくっついて、パリやヨーロッパの話を面白そうに聞いている。
かえっちも、いっしょに興味深く、話を聞いてくれている。
あやめっちは、週1の必修クラブを何にするか決めなくちゃいけなかった。
ゆなっちとかえっちは、3年生の終わり頃に、4年生では美術クラブに入るって、すでに決まっていた。
それで、あやめっちも2人と同じ美術クラブにした。
美術クラブの時間で、3人で絵を描いた。
ゆなっちは呉服屋さんだけあって、呉服の生地のような、自然の草木の文様を、オリジナルにデザインして絵に描いている。
かえっちは、めっちゃ迫力ある風景画を描いている。
あやめっちは可愛い女の子のキャラクターの絵を描いた。
☆
ゆなっちとかえっち、学校の帰りに、あやめっちの家に遊びに来た。
土曜日だったから、2人とも泊まるって言ってくれた。
ママは、フレンチと和食の料理を作ってくれた。
部屋のタンスの上に置いてある、お人形さんを見て
「うわ~!可愛い~」
「なんか、生きてるみたいやあ」
って2人とも言ってる。
そしたら、お人形さん、ニコッて笑ったみたい。
そして、髪の毛と衣裳、フワッと揺れたから
「うわ~!踊ってくれてる~」
って3人ともビックリして、お人形さんを見つめた。
☆
次の日の日曜日。
3人で裏庭のほうに行ってみた。
なんとなく、時空を超えた場所とつながってるように感じる草むらあった。
そこに行くと、3人とも、なんだか、時空を超えて、どこかに行けるんちゃうかな~っていう気になってきた。
なんとなく、3人で顔を見合わせて、手をしっかりつないで、「せ~のっ」で、みんなでジャンプしてみた。
3人とも、手をしっかりつないだまま、同時にフワッと浮き上がったのを感じていた。
そのあと、バサッと草の上に落ちたようだった。
あたり一面、草むらだ。
家も、めっちゃ昔の古い家になってる。
タッタッタッタッターッ
ていう、誰かの走る音、聞こえてきた。
「あーっ、ゆなっち、かえっち、あやめっち、3人見っけ~」
可愛い、ちっちゃな女の子、嬉しそうに、3人の前で言っている。
着物姿の可愛い女の子。
「も~、みんな、早く学校行くよ~」
って言って、その女の子は、3人のことを引っ張って行った。
学校に着いた。
「いせっち、どこ行ってたの~?」
って、女の子は、みんなから言われている。
「3人を連れて来たんだよー」
って答えて
「早く座りなっ!先生来るよっ」
って3人に向かって言っている。
3人は適当に、あいてるイスに座った。
「おはよ~」
って、着物の可愛い女の先生、やって来た。
「おはようございます~」
って、みんなといっしょに、あいさつした。
「今日は、みんなの書いてきた短歌を発表してもらいますね~」
って先生は言ってる。
「は~い」
って、みんな答えてる。
「じゃあ、まず、ゆなっち!」
って先生に言われて、ゆなっちは
「え~と、はいっ、じゃあ...」
って言って
「なにはがた~、短きあしの~、草の上~、とびあがりては~、あらたなる草~」
って、ゆなっちは、即興で短歌を詠んでいる。
「はいっ!よくできました~!ゆなっちは、毎回、ほんまに、よく自然や人の動きをきれいに詠めてますね~!今回のは、どういう情景で、どういう気持ちですか~?」
って先生に聞かれて
「あ、そうですね~、あしの草の上で飛び上がって、また新たな草の上に着地する時のことを詠みました~」
って答えてる。
「はい!いいですよ~!では、つぎ、かえっち!」
「あ、はいっ!」
って、かえっちも、先生に指されて、詠みはじめた。
「なにはがた~、短きあしの~、揺れるふし~、ふしぎと新たな、草へとなびく~」
「はいっ!いいですね~!かえっちも、よくできました~!かえっちは、毎回、ほんまに、繊細かつ大胆な動きを詠んでいて、良いですよ~!では、つぎ、あやめっち!」
「え?あ、はい!」
あやめっちも先生に指されて、どう詠もうか考えはじめた。
なんとなく、ふたりの短歌を参考にしよう!って思って
「なにはがた~、短きあしの~、ふしのまに~、新たなる世に~、来たる間にまに~」
「はい!あやめっちも、毎回、ちょっと面白い時空感を詠んでいて、今回も、あやめっちらしく、独特な時空を詠んでますねっ」
って先生にほめられたみたいだった。
「あれ?あやめっちのお着物の、その刺繍はネコですか?」
って先生に聞かれた。
「あ、これはプーマです」
って答えた。
「プーマ?」
「ネコの仲間です」
「飛び上がってるとこですね?」
「そうです~」
ゆなっちとかえっちは浴衣を着ていたけど、あやめっちだけプーマのTシャツだった。
「はい、では、つぎ、いせっち!」
「あ、はい!」
3人を連れて来た女の子だ。
「なにはがた~、みじかきあしの~、ふしのまも~、あわでこのよを~、すぐしてよとや~」
「よくできました~!いせっち!いいですね!心情を良く詠めてます」
それから、いせっちと、ゆなっち、かえっち、あやめっちは、また、もと来た道を帰り、さっきの草むらのあたりに戻った。
「じゃあ、みんな、またね~」
って、いせっちは、3人に手をふっている。
3人で手をしっかりにぎって、飛び上がってみた。
フワッと高く飛び上がるのを感じた。
ドサッと、3人は、手をしっかりにぎったまま、草むらの上に落ちた。
大阪の、あやめっちの家の裏庭だった。
家に入ったら、ママと空里いたので
「3人で、いせっちに会って来たよ~」
って言った。
「よかったね~!ママも、いせっちに会いたかったなあ」
って言ってる。
ママ、いせっち、知ってるのかな?
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