4年生

今日は、4年生になって大阪の小学校に初めて行く日。

ママの行ってたのと同じ小学校に行く!


「いってきまーすっ!」


「いってらっしゃーい!初日、大事やからね~」


「は~いっ!」


「みんなを笑かしたれーっ!あやめっちー」


「うんっ!わかったー!」



「パリから来ました~!よろしくお願いします~」

転校初日、教室で自己紹介した。


「うおーっ!パリなんやあー」

って、みんな驚いている。


4年雪組になった。


この小学校は、月組、雪組、花組っていうクラスだ。

いいなあ!って思った。


数字より、覚えやすい!

雪組って覚えればええんやから!

しかも、なんとなく風流だ。



小学校から帰って、ママといっしょに商店街を散策した。


そしたら、呉服屋さんのお店の前で、女子2人、こっちを見て笑っている。


「あれ?あの2人、もしかして、同じクラスの女子なんかな~?4年雪組の...」

ってママに言ってみた。

「あ、そうかもなー!2人に聞いてみる?」

「え~、今はええわ~、明日、学校に行って同じ雪組の教室にいたら、同級生なんやろなっ」

「恥ずかしいの?」

「え~?...だって、むこうはわかってるけど、こっちからはわからへんねんから...」

「そりゃそやわ!ま、明日学校行けば、わかるしな」

「そやな」



「よしっ!今日も、新しい学校やあああ!いくでー!」

そう思いながら、気合いをいれて、翌朝、学校に行った。そしたら、なんと!やっぱり、女子2人、同じ雪組の教室にいた!


教室に入って行ったら、2人の女子、こっちを見て笑っている。


「おはよう~」

って言ってみた。

「あ、おはよう~」

って返ってきた。


なんか、めっちゃ嬉しい!もう、転校して来ていきなり仲良しの友達できたみたいで!


呉服屋さんの優奈ちゃん。

そして、クラシックバレエをやってる香絵ちゃん。


「ゆーにゃん」「かえっち」って呼んで!って言われた。


「あやめっち」って呼んでね!って言った。


「あやめっちか~!そしたら、うちも『ゆなっち』にしよう!」

って言って、「ゆーにゃん」から「ゆなっち」に、呼び名を変えていた。


ゆなっちは、その日、ずっと、あやめっちのそばに、ぴったりとくっついて、パリやヨーロッパの話を面白そうに聞いている。


かえっちも、いっしょに興味深く、話を聞いてくれている。


あやめっちは、週1の必修クラブを何にするか決めなくちゃいけなかった。

ゆなっちとかえっちは、3年生の終わり頃に、4年生では美術クラブに入るって、すでに決まっていた。

それで、あやめっちも2人と同じ美術クラブにした。


美術クラブの時間で、3人で絵を描いた。

ゆなっちは呉服屋さんだけあって、呉服の生地のような、自然の草木の文様を、オリジナルにデザインして絵に描いている。


かえっちは、めっちゃ迫力ある風景画を描いている。


あやめっちは可愛い女の子のキャラクターの絵を描いた。



ゆなっちとかえっち、学校の帰りに、あやめっちの家に遊びに来た。

土曜日だったから、2人とも泊まるって言ってくれた。


ママは、フレンチと和食の料理を作ってくれた。


部屋のタンスの上に置いてある、お人形さんを見て

「うわ~!可愛い~」

「なんか、生きてるみたいやあ」

って2人とも言ってる。


そしたら、お人形さん、ニコッて笑ったみたい。

そして、髪の毛と衣裳、フワッと揺れたから

「うわ~!踊ってくれてる~」

って3人ともビックリして、お人形さんを見つめた。



次の日の日曜日。

3人で裏庭のほうに行ってみた。


なんとなく、時空を超えた場所とつながってるように感じる草むらあった。


そこに行くと、3人とも、なんだか、時空を超えて、どこかに行けるんちゃうかな~っていう気になってきた。


なんとなく、3人で顔を見合わせて、手をしっかりつないで、「せ~のっ」で、みんなでジャンプしてみた。


3人とも、手をしっかりつないだまま、同時にフワッと浮き上がったのを感じていた。


そのあと、バサッと草の上に落ちたようだった。


あたり一面、草むらだ。

家も、めっちゃ昔の古い家になってる。


タッタッタッタッターッ

ていう、誰かの走る音、聞こえてきた。


「あーっ、ゆなっち、かえっち、あやめっち、3人見っけ~」


可愛い、ちっちゃな女の子、嬉しそうに、3人の前で言っている。

着物姿の可愛い女の子。


「も~、みんな、早く学校行くよ~」

って言って、その女の子は、3人のことを引っ張って行った。


学校に着いた。


「いせっち、どこ行ってたの~?」

って、女の子は、みんなから言われている。


「3人を連れて来たんだよー」

って答えて

「早く座りなっ!先生来るよっ」

って3人に向かって言っている。


3人は適当に、あいてるイスに座った。


「おはよ~」

って、着物の可愛い女の先生、やって来た。


「おはようございます~」

って、みんなといっしょに、あいさつした。


「今日は、みんなの書いてきた短歌を発表してもらいますね~」

って先生は言ってる。


「は~い」

って、みんな答えてる。


「じゃあ、まず、ゆなっち!」

って先生に言われて、ゆなっちは


「え~と、はいっ、じゃあ...」

って言って

「なにはがた~、短きあしの~、草の上~、とびあがりては~、あらたなる草~」

って、ゆなっちは、即興で短歌を詠んでいる。


「はいっ!よくできました~!ゆなっちは、毎回、ほんまに、よく自然や人の動きをきれいに詠めてますね~!今回のは、どういう情景で、どういう気持ちですか~?」

って先生に聞かれて

「あ、そうですね~、あしの草の上で飛び上がって、また新たな草の上に着地する時のことを詠みました~」

って答えてる。


「はい!いいですよ~!では、つぎ、かえっち!」


「あ、はいっ!」

って、かえっちも、先生に指されて、詠みはじめた。


「なにはがた~、短きあしの~、揺れるふし~、ふしぎと新たな、草へとなびく~」


「はいっ!いいですね~!かえっちも、よくできました~!かえっちは、毎回、ほんまに、繊細かつ大胆な動きを詠んでいて、良いですよ~!では、つぎ、あやめっち!」


「え?あ、はい!」


あやめっちも先生に指されて、どう詠もうか考えはじめた。

なんとなく、ふたりの短歌を参考にしよう!って思って


「なにはがた~、短きあしの~、ふしのまに~、新たなる世に~、来たる間にまに~」


「はい!あやめっちも、毎回、ちょっと面白い時空感を詠んでいて、今回も、あやめっちらしく、独特な時空を詠んでますねっ」

って先生にほめられたみたいだった。


「あれ?あやめっちのお着物の、その刺繍はネコですか?」

って先生に聞かれた。

「あ、これはプーマです」

って答えた。

「プーマ?」

「ネコの仲間です」

「飛び上がってるとこですね?」

「そうです~」


ゆなっちとかえっちは浴衣を着ていたけど、あやめっちだけプーマのTシャツだった。


「はい、では、つぎ、いせっち!」


「あ、はい!」

3人を連れて来た女の子だ。


「なにはがた~、みじかきあしの~、ふしのまも~、あわでこのよを~、すぐしてよとや~」


「よくできました~!いせっち!いいですね!心情を良く詠めてます」


それから、いせっちと、ゆなっち、かえっち、あやめっちは、また、もと来た道を帰り、さっきの草むらのあたりに戻った。


「じゃあ、みんな、またね~」

って、いせっちは、3人に手をふっている。


3人で手をしっかりにぎって、飛び上がってみた。

フワッと高く飛び上がるのを感じた。


ドサッと、3人は、手をしっかりにぎったまま、草むらの上に落ちた。


大阪の、あやめっちの家の裏庭だった。


家に入ったら、ママと空里いたので

「3人で、いせっちに会って来たよ~」

って言った。


「よかったね~!ママも、いせっちに会いたかったなあ」

って言ってる。


ママ、いせっち、知ってるのかな?




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