陸上
家に、リュカっちを連れて来て、お姉ちゃん、ママ、パパとも会わせた。
お姉ちゃんとリュカっちも、感動的な再会をしていた。アルル以来の。あのアルルの闘技場で出会って以来の。
どっちかと言うと、再会にめっちゃ感動していたのは、お姉ちゃんのほう。
リュカっちは、うちのことをほんまに、めっちゃ好きで愛してくれていて、アルルで出会ったお姉ちゃんのことは、そんなには覚えてはいないみたい。
ただ、白熊っていう日本の苗字に、色と動物の入っていたことに、めっちゃ印象的で覚えていたらしい。
あと、お姉ちゃんと会った場所も、アルルの闘技場っていう、めっちゃ限定された空間だったことで、あそこの場所で、なんか、可愛い日本の女の子と出会ったな~っていうことをずっと覚えていたらしい。
リュカっちは、あの日は、アルルで風景画を描いていたらしく、ついでにお姉ちゃんのことも絵の中に描いとくべきやったな~って、ずっと想ってはいたらしい。
それと、リュカっちにアルルでもらった絵をお姉ちゃんでなくて、ずっとそばに飾っておいてたのは、うちだったことも、なんだか運命的な気もしている。リュカっちと、うちとを、あのリュカっちの描いた風景画は結びつけていてくれたんやろな~って。
リュカっちとの結婚式は京都でおこなった。
うちはニースでやってみたかったのもあるけど、リュカっちは日本のことをめっちゃ好きでいてくれてて、ニースも良いけど、むしろ、ふたりの想い出として京都で日本的な式を挙げたいって想ってたので...
リュカっちのママとパパも、ニースから京都まで来てくれた。
うちの家族とも会うことできた。
京都での結婚式のあとは、リュカっちのママとパパも、大阪の家に泊まって、京都や奈良や大阪や神戸など関西の観光をみんなといっしょにしていたみたい。
うちとリュカっちは、式のあと、関西国際空港から飛行機に乗ってサンフランシスコに行った。
ケーブルカーに、ふたりで乗ってたら、道沿いに、おばあちゃまのアクセサリーのお店、見えてきた。
うちはケーブルカーからピョンッて飛び降りた。
ケーブルカーまだ走っていたから、車掌さんは、落ちたのかと思ったのか、一瞬ちょっとびっくりして、うちのことを見ていた。
リュカっちは、車掌さんに向かって
「大丈夫~」
って感じで、手で合図してくれていたから、車掌さんも笑って、うちのことを見ていた。
それから、うちはダーッと走って行って、アクセサリー店のドアをブワッと勢い良く開けて、中にブュイ~ンと入っていった。
「ひさしぶり~!また来たよ~!今日はふたりで来たよ~」
ってあいさつした。
「オオーッ!結婚おめでとうー!よく来てくれたね~」
って返ってきた。
リュカっちも、あとからお店に入って来て
「このお店、来たことあるわ~」
「えっ?ほんま?」
「うんっ!高校生の時にママといっしょに来た気するー」
「ほんまに~?」
「うんっ!このお店の、壁と天井いっぱいに飾られてあるアクセサリーは、めっちゃ良く覚えてる~」
「それと...」
「えっ?それと...」
「りおちゃんと、ここで出会ったこと、今、想い出した...」
「ええーっ?うちとリュカっち、ここで出会ってたん?」
「うんっ!」
「前に、このお店に来たの、うちも高校生の時やで!」
「うんっ!」
「高校生の夏休みに来て~、お店番をしていたな~」
「そうそう!」
「あーっ!」
「りおちゃんも想い出した?」
「あーっ!フランスの男の子と会ったの想い出したーっ!」
「やったあ!」
「ボンジュールって言ってたし、その時たしか、リュカって名乗ってたよねっ!」
「うんっ!」
「うわーっ!えまお姉ちゃんよりも先に、リュカっちとうちは、ここで出会ってたんやなあああ!ええーっ?スゴいなー」
「ほんまやな」
「リュカっち、なんで、サンフランシスコに来てたん?」
「美術の用事で、ママといっしょに来てた!」
「美術の用事?」
「絵の表彰とか、いろいろ」
「うわーっ!リュカっちスゴいなー」
おばあちゃまも、うちとリュカっちのことを見て、めっちゃ笑ってくれている。お祝いに、アクセサリーを何点かづつ、ふたりにくれた!
おじいちゃまにも会いに行ったら、めっちゃ喜んでくれた。ギターを1本、お祝いにくれた!
そのあとディズニーランドに行った。
ホテルに泊まって、リュカっちといっしょに、ふたりでディズニーランドでずっと遊んでいた。
☆☆☆☆☆
3年生の担任のヴァネッサ先生は、ある日
「放課後、陸上部に入りたい人~?」
って言っていたから、ボクは
「は~い!やりたいです~」
って、手をあげた。
「じゃあ、あやめっちは、体操服に着替えて、今すぐ校庭に行ってねー」
「はーい」
校庭に行ったら、陸上やりたいみんな、すでに集まっていた。
「オオーッ!あやめっちも、やっぱり来たねー」
って陸上部の先生も、ボクを見て言っている。
「あやめっちは、走り幅跳びねー」
って先生に言われた。
「ええーっ?リレーじゃないのー?」
ボクは、リレーとか短距離走をやるつもりで来たから、まさか走り幅跳びって言われるとは思ってなかった。
でも、みんな、それぞれの種目のところに散って行って、やり始めていたから、ボクも砂場のほうへと向かった。
「リレーとか短距離走とか、すでにメンバー決まってたのかもなー?それでボクは走り幅跳びになったのかもなー?」
って思いながら砂場に着いた。
他には誰も来ないし、先生も見に来ない。
走り幅跳びは、きっと、ボクひとりでやるんやろなーって思って、じゃあ、跳んでみるか!って思った。
助走もどれくらい走れば良いのかもわからなかったけど、とりあえず適当なところに離れて、そこから走ってみた。
そして砂場の踏み切り線の上で、タアーッと砂場に向かって跳んでみた。
砂場にドサッと、着地したけど、こんな感じでええのかな~って、ひとりで思っていた。
もう1回跳んでみるかっ!って思って、砂場をきれいにならして、また適当に助走をつけて、トリャーッと跳んでみた。
砂場の脇にメジャー置いてあるから、ひとりで伸ばして距離を計測してみた。
だいたい、3メートルちょっとやった。
跳んだ線から、着地した、いちばん手前までの距離を測ればええんやろなーっ、きっと。
また、砂場をきれいにならしていたら、ふと、校舎のボクのクラスの教室の窓から、なんとなく視線を感じて、窓のほうをチラッと見てみた。
教室の窓から身を乗り出して、イレーヌちゃん、ボクのことを見てくれている。
「お~い!こっち来て~」
ってイレーヌちゃんに手で合図したら、ピューッと砂場まで飛んで来てくれた。
イレーヌちゃんに
「リレーかと思ってたら、走り幅跳びで、ずっともうボクひとりやねんな~」
って言ったら
「知ってるよ~ずっと見てたから...」
「イレーヌちゃん、ちょっと跳ぶところ見ててねー」
って言って、助走をつけ始めた。
「こんなもんで、ええのかなー?」
って言いながら、踏み切り線まで走っていって、ダアーッて跳んでみた。
「うわーっ!」
って、イレーヌちゃん、反応してくれた。
助走をつけてるから、上へと跳ぶ意識でええのかなー?
イレーヌちゃんにメジャーの端っこを線に合わせてもらって、距離を測った。
3メートル30やった。
この距離かて、ええのかどうなのか、わからへんからな~。
イレーヌちゃん、そばで見てくれているから、ボクもだんだんやる気になってきた。
こんどは、腕の力を抜いて、ぶら~んとさせながら、助走をつけてみた。手をグーでなくパーの状態にして軽く開いて、ダーッと走ってみた。
線の上で、そのまま、走ってきた勢いで、上にジャンプする感じで、跳び上がってみた。
体もちょっとは丸めるべきなんかな~って思って、コンパクトに跳んでみた。
線から、おしりの着いた地点までを計測してみた。
3メートル50くらいやった。イレーヌちゃん、見てくれてるから、だんだん伸びてはきているなー!
イレーヌちゃんも
「うおーっ!」って言いながら、跳ぶのを見てくれている。
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