空里

マーリアちゃんも、ママは日本人で、パパはフランス人。だからボクといっしょ。


幼稚園に、いつも可愛いパン屋さん来ている。

マーリアちゃんといっしょに、いつもパンを買っている。

好きなのはアーモンド型のパン。

それと丸くてフワフワしているパン。


幼稚園の砂場に向かって、ボクはたまにひとりで飛んでいる。

マーリアちゃんはいつもボクの飛んでるところを見ていてくれる。


妹の空里はパリで生まれた。

マーリアちゃんは赤ちゃんの空里のこと大好き。

ボクの家に遊びに来て、空里のことをいつも、じーっと見つめている。

空里もまた、マーリアちゃんのことをじーっと見つめている。

ふたりとも、おたがいに大好きみたい。


パパはニースの高校で美術科に行っていた。

高校生の頃から自分で画集を作って、配信したりしていた。

ニースの地元のいろんなお店の人たちも、パパの作品を見てくれて、お店の内装だとかパンフレットだとか、そういうものの制作の依頼をパパにしてくれていた。

パパは、いろんなタッチの絵を描けるけど、幻想的で可愛い女の子のキャラクターの絵も、地元のいろんな人から、めっちゃ人気もあった。

パパの絵のファンの子もいっぱいいて、画集とかも、めっちゃ買ってくれてたみたい。

南仏のあったかい気候もパパに似合ってるのかもしれない。

リュカ・マルタン...パパの名前。


☆☆☆☆☆


「ママ~っ!ちょっと海に行って絵を描いてくるねーっ!」

「行ってらっしゃーいっ!リュカ~」

日曜日の朝、クロワッサンを食べてから、ボクはスケッチブックを持って、海にでかけた。


海では、日曜日だから、みんなスケボーやったり、ドラムの練習をしたりしている。


ボクは海を見渡せる小高い丘に登った。そしてスケッチブックを開いて絵を描きはじめた。


今日はちっちゃな可愛いホテルの依頼で、ロビーに飾る可愛い風景画を描いている。


バーッと海の広がるきれいな絵も描けた。


お昼にちっちゃなレストランでシーフードのパスタを食べた。いつもよく行くお店だから、お店のお姉さんも

「リュカ!いらっしゃい~!今日もいい絵、描けた~?」

って聞いてくれる。

「うんっ、描けたよ~!今日はホテルのロビーに飾る絵なんだよー」

「うわーっ!すごいねー!リュカ」

「パスタ食べたらホテルに持って行って見せるんだーっ!」

「いいね~」


「ごちそうさま~」

レストランを出て、ボクはホテルに向かった。

海の近くのちっちゃな可愛いホテル。


「ボンジュール」

ホテルに入って、担当の広報のお姉さんに会いに行った。

「あらっ!いらっしゃい~リュカさん!」

「こんにちは~。絵を持ってきました~」


机の上に何枚か、描いてきた絵を並べた。

「うわーっ!みんないい絵ですねっ!うちのホテルのロビーにぴったりの可愛い絵ばっかり」

「ありがとうございます~」

「大きさもちょうど良いわねー!うちは可愛いホテルなので、リュカさんに描いてきていただいた絵をロビーの壁に何枚か飾ると、いい雰囲気でるわね~」


広報のお姉さんにもめっちゃ気に入ってもらえた。

「これぜんぶ、ロビーの壁に飾らせていただきますねっ」

「あっ!ありがとうございます!」


「あと、それから、部屋に飾る絵もほしいので、またきれいな風景画を描いてきてもらえないでしょうか?」

「えーっ?もちろんです~喜んで!よろしくお願いいたします」

「こちらこそ、これからもよろしくねっ!リュカさん!」


それからボクは、ホテルにある数十部屋に飾るための絵を毎日描きはじめた。

日曜日には、海や公園や美術館などに出かけて行って、地元の風景を絵に何枚も描いている。

高校で油彩画を習っているから、主に油彩画を描いているけど、水彩画やパステルや色エンピツやマーカーなど、ボクはいろんな画材好きだから、いろいろ使って、数十枚をみんな違ったイメージで絵を描いている。


数十枚の絵を描くことできたので、またホテルの広報のお姉さんのところに見せに行った。

「うわーっ!やっぱりリュカさんの絵は、うちの客室に飾るのに、本当にぴったり!各部屋それぞれの壁に、さっそく飾りますねっ!めっちゃ良き雰囲気のお部屋になりますわ!」

すべて購入していただけた。


ニースの高校を卒業したら、日本の京都に留学しようかな~。

日本の美術や、日本の文化も勉強しようかな~。


日曜日。

アルルに行って絵を描いていた。

闘技場の中に入ってみた。

ちょっと向こうのほうに、女の子ひとりで、座っている。


なんとなく、日本人みたいな気する。

日本の女子大生くらいな感じする。

たぶん日本人だろうなっ!

「こんにちは~」

ってボクは、ちょっと遠くから、その女の子に向かって、日本語で叫んでみた。


女の子は、ボクの

「こんにちは~」

っていう日本語の声に反応してくれたみたいで、ボクのほうを見てくれた。

ボクは、その子に手をふってみた。


その女の子は、ちょっと照れながらも

「こんにちは~」

って言って、ボクに手をふってくれた。


やった!やっぱり日本の女の子なんだっ!

ボクは、めっちゃ嬉しくなって、両手をいっぱいふってみた。


そしたら、その女の子も、座ってたのを立ち上がって、両手を上にあげて、大きくボクのほうに向かって、めっちゃブンブンふってくれた。


ボクは、その女の子のところにピューッて走って行って、ボクの知ってる日本語で

「日本人?」

って聞いてみた。

「そうですよ~」

って答えてくれた。

「日本のどこから?」

「大阪!」

「あっ!大阪、知ってる!京都の近くの?」

「はいっ!そうですねっ」


それから、ボクは、その女の子に、アルルで描いていた絵を見せた。

「うわーっ!きれいな絵!可愛い!トレビアン」

って言ってくれた。

「メルシーボークー」

ってボクは答えた。

それから、あっ!そうだっ!って思って

「おおきに!ありがとう!」

って言ってみた。

ママから、この前、たまたま、この日本語のお礼の言葉を教えてもらったから。特に、大阪の方言でもあるってことを。


女の子は、めっちゃ笑ってくれた。

「おおきに!って大阪弁、知ってるんですね?」

って言っていた。


ボクは

「日本語も方言いろいろですね」

って、なんとか、その子に日本語で伝えられた。


「ボクはリュカ・マルタンです。あなたのお名前は?」

って聞いてみた。

「えまです。えま・しらくま」

「えま・しらくまさんですね?」

「はいっ!ホワイト・ベアーって意味です」

「えーっ?ホワイト・ベアーですか?」

って言ったら

「はいっ!」

って言いながら、めっちゃ笑っていた。


「フランス語でウルス・ポレールかウルス・ブランですね」

って言ったら

「えっ?なんですか?」

って聞き返してきたから、ボクは

「ウルス・ポレール。ウルス・ブラン」

って、ゆっくり発音したら

「ウルス・ポレール。ウルス・ブランですね?」

って発音できていた。


ボクは、えまちゃんに、ボクの描いたアルルの風景画を1枚プレゼントした。今日描いた中で、いちばん気に入ってたやつを。


「うわーっ!ありがとう!メルシーボークー」

って言って、えまちゃんも、めっちゃ喜んで大事に受け取ってくれた。


それから

「バイバ~イ」

って手をふって、えまちゃんとわかれた。


☆☆☆☆☆


ボクは幼稚園から帰ると、空里の絵を描く。

空里のことをじーっと見つめていると、空里もまたボクのことをじーっと見つめている。

じーっとボクのことを見つめる空里の目は、めっちゃ可愛いので、可愛い空里の顔をノートに描いている。

できあがった絵を空里に見せると、笑ってめっちゃ喜んでいる。

だいたい毎日描いているから、空里の1才の誕生日には、365枚くらいになった。


空里は、いつもボクの真似ばっかりしている。空里に手をふると、ボクのことを笑ってじーっと見つめながら空里も手をふってくれる。

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