乾杯

 応接室に入るとジョージさんと女性が待っていた。二人の顔は晴れやかで幸せそうに見えた。

 女性の方から挨拶があった。

「はじめまして。アナと申します。どうぞよろしくお願いします」

 私の方も軽く会釈をする。

「こちらこそ、はじめまして。エリーナです」

「アルバートです。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


 一通りの挨拶が終わると話は本題へと移った。その場の全員が椅子に腰掛ける。先に話しはじめたのはジョージさんだった。

「相談をした日の翌朝、アナとよく行った湖に行くとやはり彼女が待っていました。そこで私は言ったのです。その、何というか、あの……」

「あなたのことが大事だから結婚して欲しい。だから死なないで、ってね」

「そ、そう」

 ジョージさんは恥ずかしそうになっていた。


 よかった。ジョージさんはちゃんと言えたんだ。伝えることができたんだ。アナ先生が今度は話し始めた。

「それで、私、彼に嘘をつくのは耐えられなくて白状したのです。あの手紙に書いた病気のことは嘘だって。あなたと結ばれるためにこんな嘘をつく私をそれでも必要としてくれますか、と言ったら、ジョージはこう答えてくれました。

それでも必要なんだよって」


 アナ先生の顔が赤くなった。彼女はジョージさんに目で何かの合図をした。ジョージさんははにかみながらこう言った。

「と、いうことで私たち、今度結婚式を挙げることになりました」


「おめでとうございます!」

「おめでとうジョージ!」

 私とアルは大きな拍手をジョージさんとアナ先生に送った。二人は嬉しそうに笑った。

「ありがとうございます」

「ありがとうございます。とても嬉しいです」


 アルはクロースさんを呼んだ。

「クロース、ワインを持ってきてほしい。せっかくなので、お祝いがしたい」

 するとクロースさんも嬉しかったのか少し笑った。

「かしこまりました。ジョージ様、アナ様、おめでとうございます」


 クロースさんがワインを取りに向かうと、ジョージさんが改まって私とアルの方を見た。

「アル、この前は本当にありがとう。二人がいなかったらどうなっていたことか」

「そうだね。僕らがいなかったら本当にどうなってか」

「ははは」

「あははは」

 アルとジョージさんは笑い合った。それを見ているとアナ先生が私にこう言った。

「エリーナ妃、本当にありがとうございました。おかげさまでジョージと幸せになれそうです」

「それならよかったです」

「あなたとアルバート王子も幸せそうですね」

 私は一瞬だけどう答えれば良いかわからなくなった。でも、そう言ってくれるのならば、そうなのかもしれない。

「ありがとうございます」


 程なくしてクロースさんがワインを持って戻ってきた。ボトルを開けてそれぞれのグラスにワインを注ぐと、私たちは一斉に乾杯をした。

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