手を握って

 ジョージさんが相談に来てから一週間近くが経った。私とアルは空を眺めながら紅茶を楽しんでいる。二人でゆっくりできたのはおおよそ一ヶ月ぶりだった。


 しばらくゆっくりしているとロンが私たちのそばまでやってきた。後ろの方からクロースさんもこちらに向かってくる。

「二人とも、ご来客ですよ」

 アルがすぐに反応する。

「誰が来たのかな?」

「ジョージさん達です」

 

 どうやらジョージさんとアナ先生の間で何らかの決着がついたようだった。私とアルは思わず立ち上がる。

「すぐに会いたいわ。今はどちらにいる?」

 ロンの後でやってきたクロースさんが答えてくれる。

「応接室で待たせております」

「よし、じゃあ行こう」

 先に動いたのはアルだった。どうやらアルもあの件がどうなったのか気になっていたようだった。


「待ってよ、アル!」

 彼は早足で城内へと向かっていく。私は慌てて彼を追いかけた。ダメだ、追いつかない。

 彼を追いかけながら、私はふと考える。

 アルは私のことをどう思っているのだろうか。私とアルは幼馴染だ。私たちが一緒に暮らしているのは、あくまで契約結婚であり、きっかけは私が大臣のカニエルから婚約破棄をされたからである。

 要するに成り行きで今があるのだ。だから、アルが私のことをどう思っているのかを実はちゃんと聞いたことがない。


 怖いのだ。彼が私のことをどう思っているのかが。これでもし、アルが何とも思っていないのなら、私は傷ついてしまうかもしれない。


 その上、ジョージさんとアナ先生の件で私は少し考えてしまったことがある。ジョージさんとアナ先生はお互いにお互いのことが大事だった。だからこそ、アナ先生はジョージさんにプロポーズをさせようと嘘を手紙に書いた。私は二人の関係が少し羨ましくなってしまった。


 彼の後を追いかけていて、私は、彼が私のことをどう思っているのかに自信がないことに気がついてしまった。

 その直後、小石か何かが靴に引っかかって私は転んでしまった。


 頭の中がぐるぐるする。結局のところ、アルは私のことなんてあまり大事ではないのではないか。

 そんなことばかり考えてしまう。


 地面を見ながらぐるぐる考えていると手前の方から気配がした。

「大丈夫?」

 目線を上げると、アルが私に手を差し伸べてくれていた。

「転んだだけよ」

 私は彼の手を取って立ち上がった。

 アルがどう思っているのかの答えを出すのはもう少し先でも良いのかもしれない。


 私はアルの手を握って、また歩き始めた。

 

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