明日、伝えたいこと
アルは続ける。
「それがあなたの本心ならば、それをそっくりそのまま伝えれば良いんだよ。それがアナさんにとって何よりの救いになるんじゃないかな。少なくとも、僕はそう思うんだ」
ジョージさんの表情には先程まではなかった希望みたいなものがあった。
「わかった。明日、湖に行って、アナさんに会いに行くよ。そして、今の自分がどう思っているのかまっすぐ伝える」
アルはジョージさんの意思を聞いて安心したようだった。
「行ってこい、ジョージ」
「ああ、行ってくるよ」
こうして、ジョージさんの悩みは晴れた。彼は少しだけゆっくりとしてから、帰ることになった。
帰り際、アルと私とロン、それからクロースさんの四人で、城の門前までジョージさんを見送る。気づけば、日はとっくに暮れていた。
ランプを持って城を出ようとするジョージさんが言う。
「今日は本当に迷惑をかけてすまなかった。だけど、おかげで、どうしたら良いのかわかったよ」
アルがそれに応える。
「それならば良かった。アナさんを幸せにするんだぞ」
ジョージさんは少しだけ照れくさそうになった。
「ああ、精一杯そうするよ」
彼は今度は私やロンの方を見回した。
「エリーナ妃とロンくんにも大変世話になった。一緒に悩んでくれて、ありがとう」
そう言われて私は嬉しくなった。
「こちらこそ、ありがとうございました。アナ先生によろしく、お伝えください」
「僕の方からもありがとうございます」
私とロンは二人合わせてお辞儀をした。
「じゃあ、また今度遊びにくるよ」
ジョージさんが門の外に出る。
「ああ、待っているよ。あ、そうだ。アナさんの件がどうなったのか近いうちに、教えて欲しいな。僕らもどうなったのか気になって仕方ないからさ」
「わかった」
そうしてジョージさんは闇夜の方に向かって歩き始めた。私たちは彼の姿が見えなくなるまで手を振っていた。
場内に戻って、改めて考える。アナ先生がジョージさんに手紙を送ったのは、やはりアナ先生の方もジョージさんが大事だからなのだろうなと思う。だからこそ、明日、どうなるのかが気になってしまう。
そのことを考えながら自室で紅茶を飲んでいるとアルが扉を叩いてから入ってきた。
「どうしたの、アル?」
「いや、さっきのジョージの件でね。さっきの場では言わないでおいたことが有ってね」
「え?」
それは一体どういうことなのだろうか。アルは続ける。
「これは、僕の考え過ぎかもしれないが、アナさんの手紙には大まかに分けて二つの嘘があるように思うんだ」
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