第3章 おまけ

 マチルダへの返事の手紙を書き終えて、クロースさんに預ける。手紙を書くのはやはりとても疲れる。そう思った直後アルが戻ってきた。

「おかえりなさい、アル」

「ただいま」

 声で気づいたのかロンもやってくる。

「おかえりなさいませ」

「ありがとう」

 私は昼間のことを二人にも話そうと後で聞いてくれないか聞いてみることにした。

「そうだ、アル、ロン。後で話したいことがあるの。夕食の後で聞いてもらってもいいかな」

「全然構わないよ。何かあったの?」

「そうなの。ちょっと嬉しいことがあったの」

「そうなんだ」


 ただ、ここでふとアルの表情がいつもより少し疲れているように見えた。それはロンも気づいたようだった。

「アル王子、どうしたのですか? 顔が疲れてますよ」

「いや、公務でちょっと大変な事があってね」

「あら、大丈夫?」

「まあ」

 いつもそんなに疲れた顔をしないアルが疲れた顔をしているということはどうやら相当な事のようだ。彼の疲れを吹き飛ばせるような何かをできないだろうか。そこでふと思いつく。


「ねえ、夕食の前に一緒にお茶でも飲まない?」

「うん、良いよ」

 ということで私は昼間に飲んだ紅茶を急いで用意した。食堂に移動して紅茶を淹れる。それから、人数分のティーカップに紅茶を注ぐ。もちろんクロースさんたちにもである。

「エリーナ様、わざわざありがとうございます」

 クロースさんが申し訳なさそうに言った。

「いいのよ、これくらい」


 全員分注ぎ終わったところで皆んな一斉に飲んだ。

「美味しい」

「美味しいですね」

 皆んなから美味しいという声が上がる。そう思ってくれたのなら淹れた甲斐がある。アルもゆっくりと飲んでいる。

「美味しいよ、エリ」

「ありがとう」


 アルは飲み終わったところでティーカップを置いた。

「これは僕のためなんだよね。さっき二人に僕が疲れているように見えていたから」

「その通りよ。少しでも疲れがとれると良いなと思って」

「ありがとう。その気持ちがとても嬉しい」

 アルはさっきよりも晴れやかな顔をしている。それを見ると私の方まで嬉しくなる。気づけば、私の疲れもとれていた。


 アルが目の前までやってくる。

「後で、話聞かせてね」

「うん」

 私は楽しみな気持ちで答えた。

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