すっきりしない話

 私たちは意を決して屋敷の門を開いた。門から金属同士が擦れる音がする。音で気がついたのか、中から何人もの人が出てきた。その内の代表らしき男が先頭に立って道を塞ぐ。

「勝手に入られては困ります! 今すぐお引き取り願います」

 すぐにアンソニーが私たちの前へと出る。

「ミーガンに会わせてほしい」

「ミーガン、という方はこの屋敷におりません」

 アンソニーは剣を抜いて剣先を男に突きつけた。

「いいから会わせろ。さもなくば、お前たちを斬る」


 男は途端に狼狽える。

「わ、わかった! そこで待っていろ、今すぐ呼んでくるから!」

「ここで待てるか! 案内しろ、いいな」

「ひ、ひぃ……」

 男とその取り巻きたちはあっさりと引き下がった。彼らについて行く。

 その道中でアルはアンソニーに向かって小さな声で言った。

「少し脅し過ぎなのではないか? 私もヒヤヒヤしたぞ」

「すみません……、つい」

 アンソニーはアルに対して申し訳なさそうにしていた。やはり彼も根は優しいのかもしれない。私は、あの程度の大声なら大丈夫な方である。


 屋敷の中を案内され、着いた部屋には一人の女性が居た。その女性は髪型が違えどアンソニーの写真に写っている女性と同じ顔をしている。彼女は私たちに一瞥すると窓の方に顔を向けた。

「あら、バレちゃったみたいね」

「これまでだ、ミーガン。いや、あなたの名はミーガンではないのか」

「そうね。私の名はミーガンではないわね」

「そこの男たちと一緒に来てもらおうか」

 ミーガンと呼ばれたその女性は、ため息を一つ吐いた。それからこちらの方を向いた。

「横にいるのは王子とお妃様のようね。どうしてここに」

 私は真っ直ぐ彼女の目を見た。

「私の、友人があなたの仲間に傷つけられたからです」

 すると、彼女は大きな声で笑った。


「あはは、あはは、そうだったのね! ああ、なんかとんでもないことしちゃったみたいね」

 私は彼女に何も言い返せなくなった。

「私たちを捕まえても、私たちの遊びはきっとまだ続くわよ。だってまだまだ仲間はいるもの」

 私はこれを聞いた瞬間怖気がした。私とアルはとてつもなく大きな闇に立ち向かっているのかもしれない。私は少しだけ後退りした。


 それから彼女とその取り巻きたちは何の抵抗もすることなく、捕まっていった。その後、彼女ら一人一人にあれこれ話を聞いたが、やはりマチルダを騙したロナルドらしき男はいなかった。しかも彼女らは全員、一連の詐欺グループの中では下っ端であり、組織の上層部のことはあまり詳しくないという。


 あまりにもすっきりしない話である。

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