相手は同じ
程なくしてその武装した何者かが私たちの目の前までやってきた。一見すると相手は体格からして男性であり、どうやら剣を携えているようだった。ロンが少し狼狽えている。
「どうしますか……?」
アルはいつも通りの様子で相手の方を眺めている。
「ちょっと話をしてみよう」
「アル」
「もしかすると向こうも敵は同じかもしれない」
敵は同じ。アルはその男が向こうの屋敷の住人たちに騙された仕返しにやってきたのではないかと読んでいるようだった。すると男がこちら側に気づいたのか剣をいつでも抜けるような体勢で近づいてきた。明らかに警戒されている。だが、その警戒はすぐに解かれたようだった。剣の柄から手を離し男は私たちに向かってひざまづいた。
「アルバート王子とエリーナ妃、どうしてこちらに!」
「顔を上げていいぞ。あなたは?」
「私はアンソニーと申します。実は、向こうの屋敷の者たちに騙されまして、その報復に向かっている次第でございます。どうかここから先へ通してはいただけないでしょうか!」
アルはいつも私やロンに見せている顔とは違った厳かな顔をしてアンソニーという男の話を聞いている。
「……本当に彼らがあなたを騙したという証拠はあるのか」
「……あります」
アンソニーは肩にかけていた袋から二枚の写真を出した。それらが地面に左右に置かれる。どちらにも同じ女性が写っている。左の写真にはアンソニーも写っている。写真の中の彼は幸せそうだ。
「左にあるのは私と婚約者だったミーガンを写した一枚。右は私の友とその婚約者、サーナを写したものです。友も彼女に騙され、ショックから立ち直れていない状況です」
自分の婚約者が同じ顔の女性が名前を変えて別の男性と婚約を結んでいた。確かにそれは証拠になるだろう。アルはしゃがんで二枚の写真を見比べる。
「どうやってここを突き止めたのですが」
「同じように騙された者からここの屋敷の話を聞きまして、そこから後は自分で調べて間違いないと確信しました」
アンソニーの話を聞き終えるとアルは立ち上がった。
「わかった。私たちもついていこう。実は私たちもこの屋敷について調べているところだったのでな。ただし、その剣で誰一人殺すな」
「ありがとうございます!」
アルはアンソニーに向けて優しい顔をしていた。それはアンソニーの苦労を労っているようだった。アンソニーの顔が先程よりいくらか明るくなる。
「では、あの屋敷へと行こうかエリ」
「わかった」
私たちはアンソニーも連れて屋敷の中へと踏み込むことにした。
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