謎の住人たち

 朝が来て、私とアルとロンは従者五人と共に例の男が目撃されたという町まで向かった。朝早くに城を出て数時間。やっと町の中心部に着いた私たちは、まずその辺りを取り仕切っている領主の家を訪ねた。彼らは私たちを快く迎えてくれた。何やら相談したいことがあるそうだ。

 しばらく広間で待たされた後で領主のご子息夫妻が現れた。二人ともまだ若そうに見えた。挨拶を交わすとご子息は早速、本題について話し始めた。


「実は、この町には何年も前に使われなくなった屋敷が一つありましてね。誰も手入れしないから草とかが生えに生えて、幽霊屋敷だとかなんだとか町民から噂されてましてね。私どももここ何年かは一族内で色々とあってその屋敷についてどうもできずにいたのです」

「ところが、ある日突然、そこへの人の出入りが始まった、ということでしょうか?」

 アルの言葉に反応したのは夫人の方だった。

「その通りでございます。突然、知らない者たちが何人も屋敷に住み始めたようで、その上、草刈りや掃除なども勝手にしているようでして。一体誰が住み始めたのか見当がつかいないので、正直なところ不気味なのです」


 領主のご子息夫妻と話を終えた私たちは件の令嬢が男を見たという場所までやってきた。その場所自体には何もなかったが、そこから東に向かって歩いてすぐの場所に例の屋敷は建っていた。アルは東の方を見つめていた。

「やはり、あの屋敷に住み出した者たちは明確な目的を持って住んでいるようだね」

「みたいですね。お二人ともどうされますか?」

 ロンは双眼鏡を持って東の方を見ている。私もその方向を見てみるが、屋敷が遠くに見えるだけである。


「そうね、今すぐ捕まえたいところだけど、本当にそこに住んでいる者たちが人を騙しているのか証拠がないわね」

「うーん、そうだね……」

 私もアルも彼らを捕まえるための決め手を持っていなかった。ここまできて、無駄足に終わるのはスッキリしない。


 ひとまずその場をロンと他の従者たちに任せて私とアルは近くの木陰に座って策を練ることにした。アルは持ってきたパンを食べながら資料を再び読み込んでいる。

「どうするつもり、アル」

「何か彼らを捕まえるための決め手がないか探しているんだけど、なかなか難しそうだよ」

「そう……」


 もはやこれまでかと考えたその時だった。ロンが慌てた様子でこちらまで駆けてきた。彼は少し焦っているようだ。

「どうしたのロン? そんなに慌てて」

「屋敷に向かって、誰かが来ています。様子からして武装しているみたいです……」

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