わかっていること

 アルはグループで詐欺を働いているのだろうと確かな口調で言った。そう言われて、いざ相手はグループ犯だろうと考えると厄介なことになってしまったなと思う。グループの全員を一度に捕まえられるかどうかはかなり難しい話のような気がしてきた。

「それで、どうするつもり?」

「マチルダさんを騙したロナルドという男をすぐに直接捕まえるのは正直難しいと思う。相手は複数人いるみたいだし、いつ誰がどこで動いているのかもわからないから。そこで」

「そこで?」


 アルはそばに畳んで置いてあった地図をテーブルの上に広げた。さらに、机の上に置いてあった紙の束を地図の上に置く。その紙の束は表紙を読むに何かの記録が書いてあるようだった。アルが説明してくれる。

「この束は、今回の件で被害に遭った人たちから話を聞いた時の記録。ついでにあれこれ調べた結果も載っている。相手についてわかっていることが少なすぎるが、今までどういうことをしてきたかはわかると思う。まずは、これを二人とも読んでほしい」

 そう言われたので、私は資料に一通り目を通した。確かに今回の相手に関する情報は少なかったが、今までの被害については概ね理解できた。確かにマチルダの件とほぼ同じやり方でお金を騙し取られ、逃げられている。本当に厄介そうな相手だと思った。一通り読み終えたので、資料をロンに渡す。ロンも読み終えると彼は資料をテーブルの上に戻した。


「この資料の中にあったサルトル家令嬢の話に気になることがある」

「婚約した男の家にいた執事の男を後日別の場所で見たというものね」

「そうそう」

 アルは広げてある地図を指差した。

「ここが、サルトル家の屋敷。次にここが令嬢が男を見たという場所。サルトル家の屋敷がある町の隣町だね。彼女が男を見た場所の近くには屋敷がある。そこで男は他の仲間と別の悪事をしてるんじゃないかな」

「そこで、アル王子はこの屋敷のことを調べたいと」

「その通り。捕まえられたら捕まえたいし、逃げられたとしても彼らの手掛かりは少しでも見つけておきたいからね」

「そうね。じゃあ、明日早速その屋敷に行ってみない。すぐに追わないとまた逃げられる気がする」

「そうだね。僕もそのつもりだよ」

「わかった。ロンもついてきてほしい。あなたの知恵を使うことがあるかも」

「わかりました。僕も巻き込まれたからにはなんとかしてあげたいと思っているので、ついていきます」

「ありがとう、二人とも」


 二人は頷いた。話が決まったので、私とロンはアルの部屋を出た。

 自分の寝室に入ってから、こういう時、頼りになる人たちがいるのってこんなにも頼もしいのだなと思えた。

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