第2章 おまけ

 ロンに部屋の紹介を済ませ、その場を後にした私とアルは城内の庭に出た。私たちは庭にある植物たちを眺めている。そこはとても綺麗な場所だった。植物たちは過度な自己主張はないが、自分に誇りを持っているかのように生えている。

 私はそれが気に入っているのだ。

「ここ綺麗よね」

「そうだね。庭師の皆さんが大事に手入れしてくれているからね」

「うん。この前ここが狙われなくてよかったよね」

「だね。燃やされていたら、きっと庭師の皆さんが報復していたかもね」

 アルが冗談めいたことを言って笑った。


「はは、それ本当に」

「本当にだよ。彼らを怒らせるととっても怖いから、くれぐれも気をつけて」

「はーい」

 一連の件が終わった今では笑える話だが、この前、城内に火が投げ込まれた際にここが狙われなくて本当によかったと私は思っている。なぜなら、こんな庭は国中探してもなかなか見ないからだ。それは、燃やされたら庭師の皆さんが報復に出るのも当然だと思えるほどに。


 私が植物たちを愛でていると、アルが私の肩を叩いた。私はアルの方に体を向ける。

「そうだ。エリに渡したいものがあった」

「え、そうなの」

「うん」

 そういうとアルは、ポケットから包みを取り出す。

「受け取ってほしい」

 彼はそれを大事そうに私の前に差し出した。

「じゃあ、遠慮なく」


 受け取った包みを開くと、中には真珠のネックレスが一つ入っていた。それは純白の輝きを放っている。

「ありがとう」

「うん。喜んでくれたようで何より」

「どこでこれを?」

「ロンの本や道具を揃えるのに街に出た時に宝石商にも立ち寄って買ってきたんだ」

「嬉しい」

「僕も嬉しい」


 嬉しいとアルに向かって言えたのは二ヶ月ぶりくらいだった。嬉しすぎて顔が赤くなってしまう。アルの方も顔が少し赤い。

「どうしたのエリ、顔が赤いよ」

「そういうアルの方も」

「そっか。あはは」

「ははは」

 アルに釣られて私も笑い出す。やはり彼と一緒になって正解だったと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る