収束とそれから
ロンと出会い、彼の家が燃やされたことから始まる一連の出来事は、犯人であるケビンを捕まえることで収束した。だが、彼の家や家財が戻ってくることはない。また、彼は新しい家に住むためのお金も持っていなかった。そこで私は、アルに一つの提案を持ちかけることにした。
「アル。ロンのことで、聞いてほしいことがあるの」
「うん。でも、エリが何を言うか大体見当はついてるけどね」
「そっか」
私はくすくすと笑う。やはり彼にはお見通しだったか。もっと言うと、彼は私の考えを見越してかこっそり準備まで進めているらしい。全く……。
アルとは昔から考えが合うことが多かった。私はそれが嬉しい。けど、一方で恥ずかしくてその「嬉しい」の一言が、ここ二ヶ月なかなか出ないでいる。
「ロンをさ、しばらくの間、私たちで面倒を見ない?」
「……そういうと思ったよ。だから、もう彼の部屋や生活するために必要そうな物は用意してある」
「ありがとう」
「いいんだ。彼の人となりはここ数日でよくわかったから、このまま追い出しても酷だからね。それに彼は将来有望そうだから、僕らにできることは何でもしてあげたい」
それから、私たちは二人で少し笑い合った。
翌日、アルと二人でロンに提案をすると彼は深く頭を下げた。
「こんな僕のために、ありがとうございます」
「いいのよ。私たちはあなたを見捨たりはしないよ」
「本当にいいのですか?」
「ええ、もちろん。そのための準備もしてありますよ」
「何から何まで、本当にありがとうございます」
彼は安心しているように見えた。それを見ていると私たちまで安心してくる。
ここで、私は一つ気がかりなことを聞いてみる。
「ところで、気持ちは落ち着いた?」
ロンは少し寂しそうに、だけど、前を向いた目で答えてくれた。
「まだです。ですが、いつかまた、彼と向き合える日が来ることを待つことにします。今は、それで十分です」
それを聞いて、私は安心できた。彼ならきっと大丈夫だろう。
「それなら、よかった」
「じゃあ、用意した部屋を案内しますね」
そうして私たちは、ロンに彼のために用意した部屋を見せる。
「うわあ! 凄い、色々な道具が揃ってる!」
ロンは目を輝かせて部屋を見回した。その部屋には、集められた限りの科学の本や、実験道具が揃えられている。
アルはいつの間、どうやって本や道具を揃えたのだろうか? 私はアルに聞いてみた。
「どうやって揃えたの?」
「まあ、あの手この手で」
「そっか。彼のためにありがとう」
「うん」
ロンは嬉しそうに本を読み始めている。その様子を見て、私たちは彼を助けてよかったなと思うのだった。
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