科学っ子と親友

「久しぶりだな、ロン」

「久しぶりケビン……。ケビン、どうして、どうしてこんな事したんだよ。僕の家を燃やして、お妃様たちのお城まで燃やそうとしてさ。どうしちゃったんだよ」

 ロンは泣きそうになるのを堪えて、必死に問いただしている。放火犯のケビンはそんな彼のことを睨んで、彼に近寄ろうとする。それを慌てて使用人たちが押さえかかった。


「おまえのことが嫌いだ! おまえのことが憎い! おまえのことが、うら、やましかったんだ……」

「だからってなんで、僕の家や城を燃やしたんだ……」

「おまえには解るか! 解られてたまるか! これが俺なりのやり方だ、何もいうんじゃねえ!」

 取り押さえられたケビンはロンに向けて唾を吐く。ロンはとてもとても辛そうだった。これ以上二人を近づけるのは危険だと思ったのか、アルは使用人たちに合図を出して、ケビンを城の方へと先に連れて行った。


 ロンはしばらくの間、その場で立ち尽くしていた。私やアルたちもケビンの話を聞いて同じようになっている。

「ケビン……」

 ロンがぽつりと呟いた。今、この場で私は、ロンのために何ができるだろうか。思えば、私はずっと考えている。誰かのために自らは何ができるのかを。それは、今の状況にも当てはまる。悩みに悩んだ末に私は、彼の肩を叩いた。


「君は、ケビンの気持ちがわからなかったんでしょ。そりゃそうだよ。私たちだってあんなこと言われても理解できないもん。だから、無理に理解しなくて……」

「違う!」

 ロンが叫んだ。ここ数日一緒に居て、初めて見る姿だった。

「違うけど、合っているんだ! ケビンの気持ちがわからないんだ! でも、わかりたくもないんだ! 何なんだ、この気持ちは! 矛盾している、矛盾しているよ!」

 これを聞いた瞬間。私は思わず彼を抱きしめていた。

「そうだよ! そうだとも。それが人間なんだよ! 人間らしさなんだよ。何もわからなくて当然なんだよ。だから、だから生きているんだよ。お願いだから、君には間違えてほしくない」


 ロンは遂に耐えきれなくなって泣きはじめた。彼のことを抱きしめ終えると、彼は膝から崩れ落ち、泣き続けている。

「僕以外の人を抱きしめるのは、ちょっと妬けるよ……」

 アルは泣きながら軽口を言った。確かに申し訳のないことをしたと思う。

「ごめん……」

「ま、いいけどさ」


 彼はその後もしばらく泣き続けた。冷たい夜の空には彼の泣き叫ぶ声だけが響いている。空は何も返事をしてくれないのだ。

「うわあ! うわあ! あああ!」

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