放火犯を捕まえろ

 翌日の夜。道の傍らで松明が一つついている。それが合図となっていた。やはりケビンと思わしき人物が城の前までやってきた。その人物は矢に火をつけるとすかさず弓を構えている。私とアルとロンは城の一室からそれを眺めていた。この部屋の明かりは消してあり、小さな照明だけを頼りに私たちはお互いの姿と外を確かめている。

「やっぱり背格好がケビンにそっくりだ……」

「そうですか……」

 ロンは強く拳を握りしめ、目を閉じる。それはまるで決意を固めているようだった。目を開くと、彼は私たちの方を向いた。

「あとは、お願いします」

「わかった」


 その直後、矢が放たれる。ケビンらしき人物は矢が城内に入ったのを確かめると即座に反対方向へと走り出した。それを確認した私たちはこの部屋の明かりをつける。それが作戦開始の合図だ。二手に分かれた使用人たちがそれぞれ行動を開始するための。


 城内に残っているメンバーで放たれた火の火消しを行う。十人ほどで火消しに当たらせている。それはすぐに終わるだろうということなので、火消しは彼らに任せ、私たちは城を出て別働隊と合流した。


 別働隊はもちろん、放火犯を捕まえるためのチームである。昨日アルが教えてくれたことによるとこの城の周りで逃げるのに適した道は三つしかない。だとしたら、放火犯はその三つのどれかを使って逃げたと考えられる。さらに、三つの中で最も最短経路で逃げられる道はすぐに判明した。


 私たちはその道に等間隔で人を三人ずつ配置し、こっそりと見張らせている。合図を出したタイミングで彼らは動くことになっていて、放火犯を代わる代わるに追いかける手筈となっていた。


「状況は?」

 アルが走り疲れていた使用人に声をかけた。

「想像以上に足が速いです。私は逃げられました。ですが、そろそろ捕まる頃でしょう」

「そうだな。彼らの帰りを待とう」


 持ってきた懐中時計で時間を測る。約十分が経った頃だろうか、森の方から声がした。

「捕らえました!」

「よくやった!」

 私たち三人は急いで使用人の案内で放火犯が捕まっている場所へと向かう。


 現場に到着すると、使用人たちが縄で縛られた放火犯を囲んでいる。放火犯はマスクをしており、顔が見えなかった。

「この人なのね?」

 私が使用人の一人に聞いた。

「はい。逃げ足が速くて苦労しましたが、なんとか。こいつが持っていた物はこちらです」

 別の使用人は抱えていた物を私たちのそばに置いた。確かに、弓と矢、油などの道具が揃っている。


「では、お顔を拝見するとしますか」

 アルが放火犯のマスクを外す。すると、

「ああ、ケビン……」

 ロンが悲しい顔を浮かべた。

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