科学っ子の涙

 私たちはロンからケビンについて詳しく聞いた。

「彼は科学の知識があるし、弓矢の扱いにも長けていました。だから何度か弓を見せてもらったこともあります。どうして今まで忘れてたんだろう……」

 ケビンについて話している彼はとても悲しそうで悔しそうだった。

「人間誰しも忘れたくなることだってあるよ。特に喧嘩別れした相手とのことなんて」

 私は彼を元気づけようと軽い口調でこう言った。だが、少し言い方が悪かったかもしれないとすぐに悔いた。

「僕は彼を止めることができなかった。その上、どうしてか僕の家を燃やすなんて。だけど、彼をどうしても許そうとする自分がいて、だから、お願いします。彼を捕まえないでください」

 ロンの強く握り締めた拳に涙が落ちた。ロンなりにケビンのことを信じたいのかもしれない。ロンの純粋さが私の心に突き刺さった。


 ロンがあまりにも悲しそうだったので、私とアルは一旦部屋を移った。アルは苦しそうな顔をしている。

「なんか、申し訳ないことをしてしまったかも」

 彼には酷なことになってしまったかもしれない。そう思うと私は心が痛んだ。アルもまた同じようだった。

「私も、彼の涙を見てたらそう思ってしまった」

 私だって、ロンと一緒に泣いてしまいたいところだ。だが、それでも、

「それでも、この城にも被害が出た以上、僕たちはケビンを止める必要がある」

 アルは決意を固めて言った。彼を止めなくては。新たな被害が出る前に。

「そうね。だけど、どうやって止めるの?」

「それは今、考えている。うーん」

 彼は腕を組みながら部屋の中をぐるぐると回った。考え事をしている彼を見て、私も何かできないかと考えた。何か、何か上手いことケビンを誘き出して捕まえることはできないものか。仮に誘き出せたとしても昨晩の様子を見る限り逃げ足は相当早いようだ。

「それと、ケビンはどうやら足が早いみたいだよね」

 私は考えていたことをアルに言ってみた。アルは頷いてから返事をした。

「そうだね。だから、その辺に対応しないと仮に見つけ出せたとしてもすぐに逃げられてしまう」

「そうなんだよ。だからどうしたらいいのかなと思って」

「うーん」

 

 私たちはしばらく考え込んだ。考えているとアルはメモを見て何かを閃いたような仕草をした。

「見えた。ケビンを止める方法を」

「本当!」

「ええ、多分これで……」

 それからアルはケビンを捕まえるための作戦を説明してくれた。それを聞いて、これならいけるかもしれないと私も思った。

 私たちはケビンを捕まえるために動き始めた。

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