火事の後で
「何だって!」
私たちはすぐさまに彼の家のそばまで行ってみた。すると彼の家はひどく燃えていて、誰も近づけない状態だった。
「……」
ロンは膝から崩れ落ちて、何も言えずに座り込んでいた。彼の姿を見て、私はここは自分が助けるしかないような気がした。私は、彼の肩をたたいた。
「とりあえず、私たちの城においで。話はそれからしよう」
私はロンを城に泊めさせることにした。
城に戻って私たちはロンにも温かい食べ物を差し出した。彼は幸いそれを食べてくれた。
「どうして、こうなったんだろう……」
ロンが悲しそうにしている。
「燃えた時、どういう状況だったの?」
私は状況を把握しようと彼に色々聞いてみることにした。
「エリーナ妃が帰ってから僕は家を出て、二時間くらい市場で働いていました。仕事が終わって家に戻ると既に燃えていて」
「つまり、燃えた理由がわからない?」
「そうです。燃えるようなことをした覚えもないです」
「そっか……」
彼が頷くとずっと話を聞いていたアルがこちらに目を向けた。
「もしかすると誰かに火を放たれた可能性もあるってことですよね?」
「わからないです。だって、そんな事になるような人とのトラブルも無いですし」
「なるほど」
アルはそれから少し考え込んで、立ち上がった。
「よし、明日の朝に火が落ち着いていたらあなたの家を見てみましょう。それでいいですか?」
「はい」
「では、決まりですね。それではまた明日。僕は寝ます」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい、エリ」
彼は部屋を出て、自分の寝室へと向かった。確かに、時刻は日付が変わるかどうかの頃合いだった。
「ロン、今日はもう遅いから寝ましょう」
「そうですね。休まないと」
「じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
私も自分の寝室へと向かって、それからすぐに眠った。
翌朝、再び彼の家の前まで行くと既に全てが黒く焼け焦げていた。あれから、市場のみんなで火消しをしてくれたようだった。私たちは火の専門家の立ち合いのもとで焼け跡の中へ入った。
「これはひどい……」
全てが焦げてしまっていて、元の姿は跡形も無かった。
「この中から何か見つかりますか?」
ロンが不安げに聞いてきた。
「わからないけど、調べる価値はあるよ」
私とアルは手分けして焼け跡を見てまわった。全てが黒く焦げて原形も無い。そんな中からこの火事の原因であろう物を見つけるのはなかなか簡単ではない。それでも、彼のために、見つけ出したかった。この火事の原因を。
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