見つかった手がかり
私たちは焼け跡の中を探し続けた。休み休み続けているとアルが手招きをした。
「エリ、ロン、これを見てくれない」
私とロンはアルの方へと寄り集まった。
「これを見てよ。何かが刺さってる」
アルが指した方には先端が鋭利な何かが地面に落ちていた。
「こういうものは持ってた?」
アルはロンに聞いた。
「いや、こんなものは家に無かったはずですよ……」
「じゃあ、これは一体何だろう?」
アルはそれを持ち上げて、まじまじと見つめた。それから、鼻に近づけて匂いを嗅いでいた。
「これは矢かな? 油の匂いもほのかにする……」
「矢ですか……」
「うん。多分、これで火を放ったのかもしれないね」
「じゃあ、誰がこんな物を?」
「それはわからないからこれから調べよう」
アルはそれを包みに包んだ。それから焼け跡の中を出た。
改めて焼け跡の全体を見ると、昨日来て色々な物が置かれていたロンの家はもう無かった。私はなんだか寂しい気持ちになった。だが、もっと辛いのはここに住んでいたロン自身だろうと思った。
「大丈夫?」
私はロンに声をかけてみた。彼は焼け跡を悲しげな顔をして見つめていた。
「あんまり大丈夫じゃないです。この町に住み着いてからずっと住んでいた家だったので」
「家族は?」
「遠いところに住んでいます。あまり会いたくないです」
「そっか」
「一人で暮らし始めてからずっと集めていた本や道具がたった一夜で無くなるなんて……」
「失う時はたった一夜で全てを失うよ」
「そうですね」
「とりあえず、帰ろう。しばらくは私たちのもとに居ていいから」
彼は涙を流した。すぐにそれを服の袖で拭った。
「はい」
私たちはロンの家を後にした。
私たちの城に戻るとアルは紙や黒板を用意してそこにロンが巻き込まれた事件の要点を書き留めた。
「まず、夕方にロン君は家を出た。それから数時間、市場のお店で働いていたと」
「そうです」
「仕事が終わって家に戻ると家は既に燃えていて近づくこともできなかった」
「はい……」
「だから、ここに来て助けを求めたと」
ロンは頷いた。
「家の焼け跡からはこんな物が見つかっている」
アルは持ち帰った矢のような物を手に取った。
「おそらく、これを誰かが放った。だが、ロン君には誰がこんなことをするのか検討がつかない。これはなかなか難しい話になってきたぞ」
アルは腕を組んで黒板を見つめた。私にもどうしてこうなるのかがわからなかった。その時だった。城のどこかからガラスが割れるような音がした。
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