第17話 二柱目の封印解除
柱・クリオヌーラ。
コロンの国に存在する厄災の封印の要である。
クリオヌーラは双頭の竜ではなく、一匹の巨大な氷の竜とされている。
エクスクラメイト王国がセミコロン王国ではなく、コロン王国へ援軍を出したのは間違いなく聖女と見紛う少女が居たからである。
六柱の封印解除は大きな祠の左右からと決まっているらしい。
ボスなのだから、そうなっているという言い伝えである。
ただ、その程度の資料しか残されていない。
そして、この頃、なんとオズワルド・ベルモンドがコロン王国にペガサス馬車によって到着していた。
その彼が娘に耳打ちをした。
「ここはネイル隊とグリーグ隊による封印解除をする、そうでしたよね。聖女様」
「えーっとそうだっけ。アーノルド様もそう仰ってた?私あんまり覚えていないから。」
と、そこでグリーグが彼女に耳打ちをした。
「あ、そか。ここでコロン王にも登場して頂くんだっけ。ねぇ、城ってどこなの?私、早く帰りたいんだけど。」
「そこの聖女様、聖女様はどのような家柄なの?お名前は?」
「ミンサと。あ、あの……。私はただ、聖女だと王に言われただけで……、白い髪だからそう……と。」
「そっか!お揃いだね!じゃあ、王様待ちか―。……待たなくても良くない?」
その言葉がそこにいた全員の周囲の空気を止めた。
勿論、彼女と二人を除いて。
「確かにそうですね。ここには二人の聖女が居ます。ですから、お二人で……」
そう、ここでグリーグはあの時のように彼女を導く。
しかも、五つの封印の解除法を彼女にだけはしっかりと見せるように動いていた。
「あの……、私……。その自信がない……です。」
「それはおかしいですね。ここで力を示さなければ、王が嘘つきだと言っているようなものですよ。アメリア様。さぁ、あの時のようにこの周りの魔物を掃討しましょう!」
「待て!お前はあの時のことを繰り返すつもりか。……そもそも、聖女候補であるならば——」
「えぇ。分かっていますとも。聖女はただ一人。ですから……」
アメリアには違和感しかなった。
そも、どうして世界はこんなにゆっくりと祠の攻略をしているのか、いやしていないところの方が多いのではないかと。
理由ははっきりしている。
当時はシオリが聖女だと世界中の皆が思っていたからだ。
だが、その父親によって、全てが狂わされた。
そして、その後ろに居たのはあの男。
今も娘の側を離れない男。
だが、急がなければならないのは事実なのだ。
だからアメリアはミンサを一瞥して、次はゴンザを一瞥した。
「ゴンザ。やはり聖女は失うべきではない。だから……、ラルフェンも頼む。」
「ラルフェンの催眠スキルですか。……それなら私も使えるので問題ありませんよ。」
「はぁ?……このおっさん、あくまで……。チッ。分ったよ。」
「なるほどなるほど。アメリア様は彼女は偽物だと認識したと。ですが、私はちゃーんとクリスにお願いしますよ。勿論、私はクリス様を信じています。死なばもろとも、一緒に入るつもりですが……。アライザ、そちらをお願いします。ちゃーんとミンサ様をお守りしてくださいね。」
グリーグが突然、意味不明なことを言った。
いや、意味不明ではないか。
結局、このやり方で今までも初見殺しを見て来たのだ。
ミンサがグリーグの部下アライザ・デュセルゼによってゆっくりと連れられて行く。
聖女二人による封印の儀。
普通に考えれば成功する筈なのだが……
「……頼む。うまく行ってくれ!」
異様な雰囲気が漂っている。
でも、左右から同時に宝玉を嵌めることは間違えではない。
そして、グリーグはクリスを信じているのだ。そしてもしかするとミンサも信じているのかもしれない。
だから、結局予定は全て狂ってしまい、封印解除役はグリーグ隊で行うことになった。
何も起こらず再封印ができるのなら、幸運というよりは僥倖。
「今回は待つ必要がないですからね。アメリア様。カウントダウンをお願いしますよ!」
◇
「10…9…8…7…6…5…」
分からない。
グリーグの、いやアーノルドの、いやベルモンドの狙いが分からない。
そも、聖女とは一体何なのか、アメリアにはもう分からない。
ただ、やるべきことは決まっているのだ。
「…4…3…2…2…1」
そして。
事態はとんでもないことに。
なると、思っていた。
だが、前回と明らかに様子がおかしい。
まず、あの時のように祠が消えない。
そして、
突然、地面が凍り付き始めた。
冷たい空気はどうしてこれほどまで声の通りを良くするのか。
そんな異常事態の中、怒鳴り声に近い女の子が響き渡った。
「グリーグ!悪い!ミンサが逃げた!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます