第15話 深草に集う
急な坂道を車で登り切り、右手に事務所が望めたところで直ぐに左折する。リンドウが車を入れたのは、道ではなく駐車場である。細かい砂利の敷かれたのを、タイヤでじゃりじゃりと
リンドウと
バタン。
扉が閉まるのもほぼ同時というのが、気の合っているかのようでリンドウは内心苦笑した。当の藤堂は
気を切り替える。
辺りを軽く見渡せば、松の樹が幾本か植わり、空の青を視界から
集合墓地である。
更に、供養墓に望み左手へ向かえば
リンドウは車に鍵をかけると駐車場を出た。藤堂がそのあとに続く。
御影石の階段を登り、続く石床を進む。
対して、
リンドウの知る限り、現在も
厄介なのだ。マダラは。
先代のマダラであったリンドウの母は、それはもう面倒ごとを各地に振りまいていたようで、未だにその尻拭いが終わらない。今回の
――始末まで事をやりきらないタチだったのだ、あの母は。
道中よろしく仲間を引き連れ、日本の各地を練り歩いては、
しかし、結局事は歪んで残る。
だから、助け手が存在するのだ。
コツコツの革のブーツの踵が石床を叩く。
リンドウと藤堂の眼には、すでに待ち合わせた二人の人影が映っている。
両者男である。外見は共に三十そこそこ。
一人は赤い髪に柔和な笑みを浮かべている。産まれ落ちたその時から、そうだったのではないかと疑いそうになる、はんなりとした微笑。落ち着きすぎるほど落ち着いた物腰。細く長身な身体はすっきりと伸びて、身長に見合うだけの手脚の長さがある。
もう一人は青い髪をしている。鋭く、笹の葉のように細い
二人の間を会釈がてらすり抜け、リンドウは持参してきた線香をあげて目を伏せると手を合わせた。
くるり振り返ると、リンドウは軽く固まった。自らの真後ろで生真面目そうに藤堂が眼を伏せ手を合わせていたのである。
リンドウの僅かな動揺を察知したのか、藤堂はぱちりと目を開き、ひょいと右の片眉を上げて見せた。掌は合わせたままで。
(どうかしたか)
「なんでもない」
動揺を悟られたくなく僅かに
「お久しぶりです、
リンドウは
赤髪の
「ご無沙汰しております、リンドウさん。――
(息災そうだな)
「はい」
(松岡のも、変わらずの
「ちょっと藤堂」
小声で
「リンドウ氏。僕の機嫌ならば気にする事はないぞ。藤堂氏の言動の
「そう言っていただけますと……」
ようよう胸をなでおろすと、それでもリンドウは藤堂の脇腹を小突いた。
そう。当代マダラの選ぶ男は三者すでに揃っている。
神の
人の
そして、鬼の
神を産ませたくば人を当てる。
鬼を産ませたくば神を当てる。
人を産ませたくば鬼を当てる。
己という例外はあれど、基本こうなる事は間違いない。そうと知れた上で、この中から一人を選ばねばならない。
リンドウはもう――藤堂と
悩みの種に、そうそう人まで加えてはいられない。
リンドウは今一度吐息を零してから、自らを含め集った四者を見る。
藤堂の
これが、此度の
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