北改札を出て東口、【ダンジョン】前で合流を。【後編】
気になったのは攻略のヒントだ……。
『群れとなり動くモンスターは、単独では獲物を捕らえられません』
……つまり、孤立させてしまえば、目の前のモンスターも私と同じってことでしょ?
吹雪の中で、視界不良。
行き先も、獲物も分からない……、今、自分がいる場所さえも。
握っていたスマホがずしりと重たくなる……だけど持てないわけじゃない……。
重さが加わったことで、逆に持ちやすくなり、手に馴染む。
まるで最初から握っていたみたいに、自分の体の一部のように動かせそうだ。
スマホの画面が細く、柄となり、上から刃が伸びている……、
剣、だ――……私の武器。
追加特典、だったっけ?
「なんでもいいけど……とりあえずこれで……――戦える」
そして私の左手には、三回しか使えない魔法があるのだ。
万全とは言えないけど、でも……なにもできなかったさっきよりは、状況は好転した。
「三回だけ、使える魔法…………え、三回!? じゃあ、使うタイミングって、いつ……?」
そんなの、今しかないとは思うけど……三回、使い切ったらと思うと……使えない。
魔法が『使える』と『使えない』とじゃ、今後の不安も変わってくる。
魔法なしで進むことを考えると、一回は残しておかないと冷静さを失いそうだ。
だから、二回だけ……できれば一回……、試し撃ちすらする余裕もないけど――
足音が激しくなる。
モンスターの動きが、活発になった!?
「もうっ、どうなっても知らないからねっっ!!」
魔法を使用しますか?
はい/いいえ
剣として握っているスマホの画面に映し出された選択肢を、タップする。
『はい』を押すと――、
私を包むように。
生まれた赤い球体が、やがて外側へ広がって――膨らんでいき……、
弾けた。
周囲一帯の雪景色を晴らすような、大爆発が――――
それから、私は晴れた道を進んで、駅へ辿り着いた。
駅までの道は、知っている景色とはがらりと変わっていたけど、現実世界と似たようなランドマークがあったので、なんとか迷うことはなかった。
たとえば歩道橋だったり、大きな道路だったり……。吹雪が晴れた後、私の魔法によって積もった雪も溶けてしまったようで――本来の『森』が見えていた。
巨木が乱立する、古さを感じる森だった……。恐竜でも徘徊していそうな……なんて予想をしていると、目の前から出てきそうなので、足早に駅へ向かい……――幸い、恐竜の姿をした『モンスター』に遭遇することはなかった。元々、いなかったのかもしれないけど……。
確か、さっきの猿がボスなんだっけ……? じゃあ、あの猿たちよりも強いモンスターはいないのかもしれない。恐竜がいたとしても、猿より脅威は下だったりして……。
まあ、私からしたらどっちも怖いんだけどさ。
「やっと、辿り着いた……」
駅の中は、私が知っている景色とまったく同じだった。
東口から入ると、反対側には西口が見える。そして途中には改札があって――。
すると、平日とまではいかないけど、それなりの人がいた。中には私の知り合いも。
「あ、
「おお、音羽ちゃんは無事だったんだね」
「あんまり心配してなさそうですね……」
音羽ちゃん『は』、ってところが気になるけど。
カメラを片手に、スマホをいじっているこの男性は、峠本
私からすると、フリーのジャーナリストって、野次馬となにが違うんだろうと思ったりもするけど……。
「野次馬との違いは、調べたことを記事にして、
「知ってます。――そんなことより、なんなんですか、これ!!」
東口、西口の先は、巨木が乱立する森になっていた。
私が知る地元の姿じゃない……面影は、少なからずあったけど……。
「どうやら東京都の北部は、異変が起きているらしいね……、大雑把に言えば、北区赤羽から、板橋区蓮根あたりまでが、【異世界・デービーバック】へ変貌しているみたい」
ジャーナリスト仲間と情報交換をしているらしく、峠本さんのスマホはさっきからひっきりなしにメールを受信している。
私のスマホにはメール、全然こないのに……。
剣の姿になっていたスマホは、駅の中に入ったら元の姿を取り戻し、見慣れたスマホになっている。充電をしなくてもバッテリーが減らなくなったのはいいけど、そもそも、他人と連絡を取るためのアプリが開けない。
というか、ない。
見られるのは私のステータスだけだ。
「音羽ちゃんは国籍を異世界にしたんだね」
「え、いや……知りません。勝手にされたんですよ……」
『はい』を押した覚えはあるけど、緊急事態だったし、押さないと死んでいた。
だったら押すしかないよ。
「責めてないよ。駅の外に出るなら――異世界に国籍を移しておいた方がいい。……ただ、」
「ただ、なんですか……やめてください。もうこれ以上、深く関わりたくないですよ……」
「駅の中で、国籍を現実世界に戻すことができるみたいだ。……だけど、異世界で得た【経験値】だったり【スキル】だったりは、国籍を移した段階で全てがリセットされる。
音羽ちゃん、レベルが2に上がっているけど、それもリセットされるみたいだよ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます