第11話 あの結末を変えたい。

朝起きた私はまた子供になっていた。


「また!?」と慌ててみたが彼氏の家ではない。横で眠る彼氏も居ない。


「どうした小雪?」

そう言ってキッチンから出てきたのは清明で「へ?清明?あれ?アンタ…水月ちゃんと…」と言うと「水月?会わせた事ないだろ?寝ぼけてんの?とりあえず今日は遅番だから朝ごはん食べたら先に買い物行こうよ。またメープルとホットケーキの粉買うからさ。あ、マジカルナースチョコレートのほうがいい?」と言って清明が笑う。


私は居ても立っても居られずにと「東京病は!?」と詰め寄ると「なんだそれ?」と返ってくる。


「今何日!?何曜日!?違う!スマホ!!」

私はスマホの通話履歴を見るとバイト先が一つしか存在しない。


「バイト先…辞めるって…」

「今日の夜言うって言ってたろ?何言ってんの?」


世界は不思議な事でいっぱいだ。

東京病、子供病、そしてこの漫画とかでよくある夢で見ましたという奴。


これが夢かどうかは関係ない。

今こうして目の前に清明が居て、私が子供で都市封鎖も起きていない。



あの結末を変えたい。

ケダモノ彼氏には悪いが清明だ。


水月ちゃんには悪いが水月ちゃんに会う前に県外に行く、そこで子供病を治して清明と一緒になる。


それしか考えられなかった私は「清明!バイト休んで!お願い!一生のお願い!」と言って自分の鞄を確認して財布と保険証を見つけると「行くよ!」と言って清明を連れ出した。

清明は困惑しながらバイト先に「家族の急病ですみません」と言って休んでくれた。


確か記事で読んだ子供病を治した医者は埼玉の秩父だったはず。


電車を乗り継ぎ秩父に着けば昼近いが私は名前だけで病院を探して扉を叩く。


病院は自宅と併設されているクリニックですぐに奥さんと思しき人が「どうしました?」と出てきた。


私は保険証を見せて「睦月 小雪と言います!起きたら子供になっていたんです!」と言うと驚いた奥さんは旦那さんに「あなた、また子供さんよ」と言って医師を呼びに行ってくれた。


住所を見て東京だった事に驚かれ、まだ子供病を治したのが一人なのになんで知っているのかを聞かれた私は問診票を書きながら「夢で見ました!」と言うと奥さんは「世の中不思議な事でいっぱいね」と言って納得してくれて清明には「彼氏さん、下着…はハードル高いわよね。でも着れる服が無くなるから駅前で買ってきてあげて」と言ってくれて、清明は「小雪、サイズのメモ紙書いてよ。流石に知らないし」と言って困惑しながら買いに行く。


その姿にピンときた奥さんは「あら?彼氏さんじゃないの?」と聞いてきた後で「貴方何日目?」と聞かれた。


「1週間です」

「んー…3回で効くと思うけど効かなかったら困るから6回分を渡すわね」


こうして旦那さん、医師が診察をしてくれて終わった私は薬を貰うと清明が真っ赤になって帰ってきて「まったく。メモ紙を店員さんに見せて揃えてもらった」と言って洋服一式を渡してくれた。


私は中を見て「色は?これも店員さん?」と聞くと「小雪は青か赤が好きだからそこから選んだよ」と言ってくれた。


嬉しくて笑顔になると奥さんが「あらあら仲良しね。折角だから観光して帰りなさい。3回で治るはずだから子供は明日の朝までよ」と言われたので「あの!帰りたくないからどこか泊まれる所!ビジネスホテルのオススメとか!」と言うと清明が「えぇ?泊まり?明日の仕事…」と言うが「明日謝るから今日は泊まろうよ!」と言って我慢をさせた。


この日は子供最後の日なので思い切り清明に甘える。


これでもかと甘える私に清明が「小雪?どうしたの?」と聞いてくるので「えぇ?だって明日にはまた23歳に戻るから甘えるの!清明抱っこ!」と言って手を前に出す。


清明は呆れながらも抱きかかえてくれて一緒に観光をしてスイーツを食べたり有名なラーメン屋でラーメンを食べる。


「金…怖い」と言って青くなる清明に「お世話になったから奢りだよ!」と言って豪遊をした。

ビジネスホテルは清明と私の組み合わせを訝しんできたので子供病と言う特別な病気で朝には大人になると説明したのに通じないのでクリニックに説明を頼んで泊まらせて貰えた。


部屋に荷物を置きながら清明が「何この小雪の熱量…」と言うので私は「いいじゃん。夜ご飯食べて宿でのんびりして明日のことは明日決めようよ」と言ってもう一度外に出た。


この日のご飯は本当に楽しかった。

多分、あの彼氏とはこのあと待つエッチな時間が負担だったんだと思う。


全ての裏側に性的なモノが見え隠れして辛かった。

だが清明にはそれはない。

本当に友として大事な人として付き合ってくれている。


そして今ここには余計な人はいない。


東京病からも逃げられた。

後は明日の朝に子供病が終われば私は清明と一緒になれる。


清明は無職になった私が結婚してと言ったら本気なら真剣に考えると言ってくれた。


清明のお嫁さんになって幸せになりたい。


もし子供ができて娘なら清明には長生きしてもらおう。私のお父さんみたいなのはダメ。私もいいお母さんになる。清明の母親みたいのは以ての外だ。


それを考えるだけでテンションが上がる。


何も知らない清明は「そんなに子供の時間が辛かったの?頑張ったんだけどなぁ」とボヤくがそうじゃない。まあ明日の朝になって都市封鎖が始まっていたら全てを話して清明のお嫁さんにしてもらう。

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