第2話 睦月 小雪の身に起きた不思議な出来事。
俺は今、世の中は知らない事、不思議なことが沢山だと目の前で俺の作ったハヤシライスを「うまっ!」と言いながら食べる睦月 小雪を見ながら痛感していた。
「よぉ食うなぁ」
「美味しいよ!清明のハヤシライス!」
睦月 小雪は彼女が大酷評をしてから捨てたハヤシライスを喜んで食べるとマジカルナースがプリントされたピンク色のマグカップで酒のようにオレンジジュースを飲んで「お代わり!」と言った。
「待て、俺のハヤシライスが全滅だ。一から作るし米を炊くから待て」
俺の言葉に小雪は怪訝そうに「彼女は米も炊いてくれないの?」と聞いてくるので「米くらいは炊いたけど今日お別れしたんだよ」と言って立ち上がると米を炊飯器に仕込んで玉ねぎをスライスする。
「へぇ、お別れね」
呆れ顔の小雪は彼女が残していった意識高い雑誌をペラペラとめくって「なにがあったの?」と聞いてくる。
「何があったの?」
その言葉をお前が言うのかという気持ちで「小雪こそ何があったんだよ」と言うと「わかんないって、さっきも言ったけど起きたらこの姿で途方に暮れながら子供の頃の服を出して着替えて買い物に出れば「お母さんは?」だし、1000円札すら「お母さんのお財布から取ったらダメなのよ?」で困ったから清明を頼ったんだよ」と言って困り顔で万札を出してヒラヒラとさせている。
今の服は俺が一緒にホームセンターまで行って上から下まで揃えてきた。
流石に前の服は古すぎてヤバかった。夜の学校に居たら間違いなく新たなる怪談になれる。そんな服装だった。
ついでに食器もマジカルナースシリーズで揃えてやったら呆れられた。
今も新品のブルーナースがポーズを決めるトレーナーを摘んで「まったく、妻子も居ないのに慣れすぎだよ」と笑う小雪。
「お互い様だよ。お母さんは?」
「知らね、新作の彼氏んとこじゃない」
頬杖ついて悪態をつく小雪。
この話題は俺達ならではでタブーはタブーだ。
お返しとばかりに小雪も「それで?彼女となにがあったの?」と聞いてくる。
彼女が出来た話は小雪には伝えていたし祝福もしてもらった。
「その前に、俺を頼るのいいけど彼氏さんは?」
「別れた。知らね」
またまた頬杖ついて悪態をつく小雪。
「それにこの姿で私だって言っても信じないしクソくだらない事を言うからヤダ。その点清明なら信じてくれるしこうして受け入れて助けてくれるのがわかってたから安心してこれたよ」
「成程、でもよく一度きり遊びにきただけでウチを覚えていたね」
小雪の家からは歩いてこれない距離でもないし、電車もバスも使えるが今の小雪が良く来れたものだと俺は思ってしまう。
「あの家から出れた記念でご馳走したから覚えてるよ」
「そうだね。あの時はご馳走様」
俺は引越し祝いで奢ってもらったファミレスの夕飯を思い出す。
「それで?何があったの?言いなって」
「まあいいか」
俺はここ最近の事から今日のことまでを説明すると小雪はブチギレて「何その女!?てかなんでここまでくる前にヤバいって気付かないかな?」と言って俺を怒ってくる。
俺は鍋にサラダ油を入れて玉ねぎを炒めながら「まあ、いつもの負い目ですね」と話すと鍋をかき混ぜる俺の横で子供がワガママを言うように見える姿で「またぁ?」と言って「清明は悪く無いじゃん?ウチの親みたいのも困るけど清明のお婆ちゃんは無茶苦茶だよ」とむすくれる。
そして「まあ本当にお婆ちゃんの言う通りにマウント取る奴なんているんだね」と小雪は驚いている。
「それは激しく同意だね」
「まあ私達はそこら辺の仲なんだからストレス溜めないで言いなよね」
俺は嬉しい気持ちを隠すように「ありがとう。じゃあハヤシライスは大盛りにしてあげるよ」と言うと小雪は「やった!」と喜んだ。
「…本気?まだ食べるの?」
「作って貰ったご飯最高!食べ続けるよ!」
小雪は胸を張ってドヤ顔でピースサインまでしている。
睦月 小雪は早くにお父さんを亡くし、母1人子1人で高校生までは手を取り合って生きてきた。
だが小雪が高校に入って少しすると母親は「もういいよね」と言って職場で彼氏を作って彼氏の家に入り浸るようになる。
生活費は振り込まれるが進路活動をするお金はないので睦月 小雪はバイトを始めて俺と出会う。
皆がバイト代の使い道を話す中、睦月 小雪は進学費用でそれを聞いた俺は素直にすごいと思った。
その頃、少し困った事のあった俺はやさぐれていて、一人暮らしの資金を貯めようとしていた。
バイト代の使い道が還元すると「遊ぶ為」ではなく「生きる為」だった事でポロッとこぼした話から意気投合をした。
睦月 小雪の母はもうこの数年で彼氏を何人も変えているらしく、フリーになると家に帰ってきて、彼氏が出来ると帰ってこなくなる。
実家は持ち家だが小雪は忙しくて掃除は命にかかわらなければやらないし、言い方は悪いが蛙の子はと言うやつでお付き合いすると彼氏の家に住み着いていたのて家で目覚めて子供だったと言う事は本当にお別れをしたのだろう。
そんな訳で人の作るご飯に飢えている。
そうなると腕によりをかけてしまいたくなる。
まあ数分後には張り切る俺を見て小雪は「張り切らないでいいって」と呆れながらに言うだろう。
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