第9話 現在地

前書き的なサムシング

投稿予定日を間違えていました。すみません。

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「どういうことだ? 魔剣士? 槍使い?」

「ええ。私たちにはこれが向いてるって、ある人にある人に教えてもらったの。それに、だいぶ訓練してそこそこ強くなったのよ?」

「はい! 槍使いとしてとても強くなったと思います!」

「……そうか……では、明日にでも―――」

「もうちょっとこの街に居たいな~って思うんですけど! いいですか!? あと数日でいいんで!」

「……分かった。数日だからな!」


 突然魔剣士や槍使いと言われても、浩介にはあまり分からない。ならば、ある程度泳がせることで自分は何もせずにパーティーが強くなるという効率的なことになると思い、承諾した。

何も知らない浩介は、また一人でレベル上げに向かう。

勿論、一人で向かうのにも理由がある。

パーティーで討伐するよりも、単独で討伐した方が経験値取得効率が上がるのだ。

だから、浩介は一人で狩りをしている。


 まあ、殲滅速度が落ちているので本末転倒だが。


「……さて。私たちも魔獣たちを狩りますか!」

「そうですね! 今日こそは太刀打ち出来たらいいのですが……」

「私たちも強くなっているし、大丈夫よ! それに、今回は確実に一体ずつ処理していきましょう。強力な結界の張り方も教えてもらったことですし」

「はい!」


 そう二人が今日の目標が決めた時、狙いすましたように四方を数多の魔獣が取り囲んだ。

しかし、二人は冷静にスキルを発動。愛は【我天超域】により二人の強化を、舞は【導光淵視】により数瞬先の未来を視ていた。


「いくわよ!」

「はい!」


 それからは、二人の一方的な蹂躙であった。

まず、精神世界で修業した愛は体の動きが最高効率まで磨かれていた。

二手先の可能性を演算できるほどに。

 舞は、元の【導光淵視】に加え、草薙の剣術。至近距離での魔法使用。これらの要素が組み合わさり、単騎での集団殲滅を可能にした。

 そして、そんな二人が殲滅を始めて五分後。周辺には、

そして、彼女らの目の前に現れたのは、とても巨大な熊だった。前のグリズリーをはるかに凌ぐ。


「……! あいつがボスっぽいわね……愛! 行くよ!」

「分かりました! 成長したんで!」


 まず、愛が突撃する。最高まで磨かれた体捌きは、草薙の剣術のような美しさは無いが、極限まで効率を求めた『武』はそれだけで美しかった。

自身の皮膚から0.01ミリも離れていないほどの見切りで回避。寸分の狂いなく、四肢に槍を突きさす。その時点で熊の機動力は限りなくゼロへ。

 そして、遅れてスタートした舞が背後に回り、炎を纏わせた剣にて斬りつけ、振り向く前に氷の槍にて地面に縫い付けた。

チェックメイトだ。


「『滅剣』」

「『絶槍』」


ゴガアアアアアアッ!!!!!!!


 周囲に破壊音が響き渡る。

“滅剣” 舞の作り出した、彼女の使用する技の中で最強の技。剣に、そして自身に数多の魔法を重ね掛けすることで疑似的な、本当に疑似的な破滅エネルギーを生み出し、対象を滅ぼす。

“絶槍” 愛の作り出した、彼女の使用する技の中で最強の技。槍の先の先に【我天超域】を極限まで送り、超密度の穂先にて敵を撃ち抜く。


「ふ~、とりあえず、終わったかしら?」

「ですね! 今回は私たちの勝ちです!!」


バリィンッ!!


「「!?」」

「おう、おめでとう。だいぶ強くなったんじゃねえの? お前ら」

「さ、彩斗さん!? 今、バリィンッって……空間が割れましたよね!?」

「ああ。【空接遠域】ってスキルで俺がいた空間とこの空間を繋げた。面白いだろ」

「……もう何をしても驚かなくなったわ。それで? この魔獣たちはあなたがけしかけたの?」

「けしかけたとかいうな。こいつらは俺の自律運動人形アンドロイドだ。魔獣を模して作ることもできるんだぞ?」

「……やっぱりそうなのね。倒しても消えないから魔獣じゃないのかと疑ったら、案の定あなたが……」

「アンドロイドってやっぱり強いですね……精神世界で相対したときから変わりません」

「まあ、戦闘力が同じな上に、完全に自律させてるからな。相手してる感覚は変わらないだろ」

「なんか納得いかないわ……」


 文字通りの自律運動人形アンドロイドというわけだ。

なお、やろうと思えばこれ一つで五つの国を同時に滅ぼせる。


「さてさて。だいぶ強くなったな。お前ら。最初のてんやわんやしてたあの頃とは違う。もう胸張って人前に出られるな」

「はい! ありがとうございます! 彩斗さんと、草薙さん、倖月さんのおかげです! 一人前かは分からないけれど、ある程度戦えるようになりました!」

「そうね。魔法を使うにしても集団殲滅ができなかった私に戦い方を教えてくれたこと、本当に感謝するわ。ありがとう」

「お前達、十分に強いぞ? ちょっとこれ見てみろ」


ブウン……という音を出しながら、三人の目の前に映像が流れる。少し離れた場所のようだ。

大量の魔物……とは言っても、彼女らが戦った半分ほどの魔獣が中心の浩介に向かい、襲い掛かる。

彩斗の自律運動人形アンドロイドだ。


『ぐっ! なんだこの魔獣たちは! なんて強さだ!』

『グオオオオオッ!!』

『俺は勇者だ! 負けることなどありえない! うおおおおおっ!!』

『グアアアアアッ!!』

『がはっ! ここ、までか……』


プツッ……


「な? 聖剣の力も使いこなせない。大した剣術も学ばない。力の無駄遣いが多い。ダメなところばかりだ。レベルを上げようにも、魔獣を狩る効率が悪すぎる。お前達よりもレベル低いぞ。今」

「えっ!? そういえば、私のレベル見てない!」

「確かに見てないわね。じゃあ、一緒に見ましょうか」

「「ステータスオープン」」


白雪 舞

Lv:135

スキル:天啓賢者・全魔無欠・導光淵視


花咲 愛菜

Lv:143

スキル:身治神癒・我天超域


「ひゃっ、ひゃくよんじゅうさん!?」

「わ、私も百三十五……なんで? 魔獣はあんまり狩ってないはず……」

自律運動人形アンドロイドは設定次第で経験値も与えられる。なぜなら経験の値だから。まあ、だいぶ難しいが……それでもできるもんはできる」

「なるほど。だから、結構な量を倒した私たちはレベルが上がったのね。でも、私の百三十五くらいだったら浩介の方が高いんじゃないの? あいつ、最初は百二十でしょ?」

「なら見るか?」

「「え??」」


バチバチッ! ブゥン……

他者の個人情報を勝手に閲覧する……それも遠くの。これが、どれだけ異常なことか分かるだろうか。


天崎 浩介

Lv:121

スキル:天啓勇者・光天魔術


「「……え?」」


 二人とも目をごしごしと擦る。瞬きを何回もし、俺に「嘘じゃないの?」みたいな目を向けて来る。嘘じゃない。


「あいつ、結局狩れた魔物三、四体なんだよ。馬鹿だな」

「ええええっ!? 嘘ぉ!?」

「マジマジ。愛菜の【我天超域】の補正と、舞のバックアップが無かったら、あいつ結構何もできないぞ。勇者の聖剣があっても」

「……なんか、悲しい現実を見た気がするわ」

「まっ、それは置いといて、お前らどうすんの? もうそろそろメサイアに行った方がいいと思うが。というか、お前ら魔王討伐すんの? 絶対?」

「ええ。これだけは譲れないわ。魔王を倒して、魔族を根絶やしにし、魔獣を生み出させない。これで、人が殺されることも無くなり、安全な世界になる。簡単でしょ?」

「……そうか」

「わ、私はどっちでもいいです! でも、覚悟はできています!」

「いや、どっちだよ」


 だが、本当に討伐するのか……まあ、無理ってのは分かってるんだけど、これ以上人と魔族に溝を作ってほしくない。


「……まあ、ひとまず俺は帰る。どうせお前ら話し合ってからメサイア行くだろうから、偶然を装って俺もメサイア行くわ」

「分かったわ。それじゃあね」

「ありがとうございました~!」

「……一つ、俺から言っておくとすれば」

「「?」」


 俺は、振り返らず言った。


「魔獣を生み出しているのは魔王ではない」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

あとがき的なサムシング

この時の彩斗、完全に助けた親子を忘れています。

彩斗的には、魔王が倒されることはないと分かっていながら、倒されてくれるなよ、とも思っています。

それにも理由がありますが、少し先で出てきます。

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