第30話

早朝から騎士団に混じって鍛練に参加するのは日課だ。


俺も王子教育は一通り学んだ。

王子教育には諸外国の言葉の他に文化や歴史も含まれる。

マナーやダンスも徹底的に教えこまれている。



兄上が卒業すると正式に立太子の発表がされる。


もう王太子としての執務を任されている兄上は補佐に決まっているレオンと次々に書類を捌いている。

優秀な兄上とレオンの横で俺にも与えられている仕事をこなしていく。

いずれは俺も兄上の補佐をするようになる。


遊んで暮らしているばかりではない。

贅沢な暮らしも民あってのものだ。

王族、貴族の義務は与えられた恩恵に甘えるだけでは国そのものが崩壊する。

求められることは多い。

俺たちは民の生活や幸せを第一に考えなければならない。

善政を行うのは兄上の仕事だ。

裏の仕事は俺がやっていく覚悟は既にできている。

それは、ライアンもダンゼルも同じだ。綺麗ごとだけじゃこの国はでは世界を相手に生き抜けない。




つい最近、兄上に婚約者が決まった。

才女だと噂の侯爵令嬢だ。

政略結婚だが、兄上の性格なら相手を尊重して仲良くやれると思う。



俺だって本当は分かっているんだ。

国の為なら俺の気持ちは優先されるべきではないと。

ティア以外の女と政略結婚する可能性の方が高いことも。


だがティアは公爵令嬢だ。

身分も教養もマナーも申し分ない。

ティアが婚約者になっても王族に娘を嫁がせたい貴族以外からは反対もされないだろう。


ただティアの気持ちも考えずに、父上やアスパルト公爵に頼むことはしたくない。


だからお願いだ。

ティアにも俺を好きになって欲しい。

ティアの気持ちを貰えるなら、なんだってする、そのための努力は惜しまない。


だから俺を好きになって、ティア。







やっと長期休暇が終わった。

今日からまた毎日ティアに会える!




馬車からレオンに手を引かれ降りてきたティアたち2人の姿は周りの視線を集める。

レオンとティアが並ぶと、2人だけが違う世界にいるように感じる。


ティアがレオンに微笑むと、いつもは無表情なレオンが優しい目で頭を軽く撫でると黄色い悲鳴があちこちから聞こえる。



ティアに近づけた気がしていたが、また距離が離れてしまったかのような、ティアが手の届かない遠くに行ってしまうような感じがした。




ダメだ!ダメだ!

弱気になってはダメだ!

諦めるなんてことは出来ないんだから・・・

気持ちは強く!



「おはようティア。領地では世話になったね。」

「おはようございますルイ様。ご満足いただけたでしょうか?」

「もちろん!毎日楽しく過ごせたよ」

「ふふ、では是非またお越しください。」


近くで見るティアの笑顔はとても可愛らしい。


ずっと思い続けてきたティアと気軽に話すことができるようになった。

名前も知らないティアを探していた時と比べると今が夢みたいだ。



今日もランチの約束も取り付けた。




俺たちが揃って食堂に入っても、前ほど騒がれなくなったな!


食堂にはエスコートして行くが、周りの婚約者同士とか、カップルが手を繋いで歩いているのを見ると正直羨ましい。


俺もいつかティアと恋人繋ぎするんだ!

そして、2人っきりでデートもするんだ!




放課後、俺たち3人は生徒会室に呼ばれた。


そうだよな。

兄上たち4年生はあと半年程で卒業だ。


王族が学園に通っている年は生徒会長になる決まりだ。

いずれ、国政に携わるんだ学ぶことは多い。

引継ぎもあるし、忙しくなるな。


来年は俺たちも3年に上がる。



この国では18歳で成人と認められる。

しかし、女性の場合は親の了承があれば16歳での婚姻も認められている。


その場合、学園を卒業することなく去って行く令嬢もいる。


基本、貴族の令嬢の婚姻は早い。

ほとんどの令嬢は学園を卒業すると、すぐに婚姻することが多い。



ティアの花嫁姿なんて間違いなく綺麗だろ!

そして、可愛いお嫁さんになるに違いない!

あ~妄想が止まらない!



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