第8話 再挑戦
――ドンドン!と扉が叩かれる音で、俺は目を覚ます。
「ん……なんだ……もう朝なのか……?」
あんまり寝た気がしないけど……と思って瞼を開くを、周囲は真っ暗。
どうやらまだ朝日は昇っていないらしい。
『ちょっと! この部屋にいるんでしょ!? 大人しく出てきなさい!』
叩く音に続いて聞こえてくる、女性の声。
どうやらレーネが起こしにきたワケではないらしい。
これはたぶん、昼間にも聞いたリーゼロッテの声だ。
……なんか、嫌な予感がするなぁ。
そう思いながら、仕方なく俺はベッドから立ち上がって扉に向かう。
そして扉を開くと、
「ようやく出てきたわね、再戦を申し込みにきたわよ」
そこには剣を持ったリーゼロッテの姿があった。
さらに開口一番に出た、〝再戦〟の言葉。
「再戦……?」
「そう、アタシ決めたの。アンタに勝つまで、アタシは何度でもアンタに勝負を挑む。負けっぱなしで終わりになんて、してやらないんだから」
瞳にメラメラと闘志を燃やし、俺に挑戦状を叩きつけてくるリーゼロッテ。
……レーネが忠告してくれてたけど、さっそく絡まれてしまったな。
それも非常に面倒くさい形で……。
「何度でもって……俺は別に、キミと戦う理由はないんだが……」
「こっちにはあるのよ! アンタに吠え面かかせてやらないと、『ヴァイラント征服騎士団』
「そう言われても……それに俺もローガン騎士団長の誘いで、『ヴァイラント征服騎士団』の一員になったんだ。だから俺はキミの部下になるワケだし、団員同士が勝手に私闘をやるのは不味いんじゃ……」
「あら、それなら余計にアタシが勝たなきゃダメね。部下より弱い上司なんて、格好がつかないもの」
まるで退く様子を見せないリーゼロッテ。
まいったなぁ、こりゃ見逃してくれそうにないぞ。
俺としては揉め事なんて勘弁したいんだが……。
「えっと……ならそれは、上司であるキミの命令ってことでいいのか?」
「それでいいわ。どうなってもアタシが全部責任を負ってあげる」
「……わかった。そこまで言うならやるよ。でも時間も時間だし、せめて明日にでも――」
「嫌よ。今がいい」
「はい……」
聞き分けのないお嬢様だなぁ……。
これじゃ騎士なのか貴族の令嬢なのかわからなくなりそうだ……。
仕方なく、俺は剣を持って部屋を出る。
リーゼロッテについていくと彼女は訓練場に出て、据え置きの松明に火を灯した。
「さて……それじゃ始めようかしら」
「ちょっと待ってくれ、一ついいか」
「? なによ」
「再戦するのは構わない。ただやるからには、今度こそキミの本気を見てみたいんだ。俺が怪我をしても構わないし、貴族だからって遠慮する必要はない」
「は……あ……? アンタ――」
リーゼロッテは一瞬ギョッとした表情をするが――すぐに口元に笑みを作った。
「……当然よ。やるからには全力でいく」
「そうしてくれ。それじゃ、いくぞ――!」
俺は剣を構え、一歩踏み出そうとする。
だが――その時だった。
「て――敵襲――ッ! 敵襲だああああああ――――ッッッ!!!」
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