第13回「白」後日談:「白い結婚、その後」

「白い結婚って、そういう意味だったんですね」


 車椅子を押す妻が慌てている。彼女の顔が赤くなっているのは振り向かずとも分かった。


 遠征で足を負傷し車椅子生活の身。弟に家督も譲ったため跡取りの心配もいらない。そもそも結婚の必要はなかったのだ。


 楽隠居する気だった僕を心配して弟が見つけてきたのが彼女だった。


 白い結婚を貫けば、いざというとき彼女は瑕疵なく次へ行ける。



 そのつもりだったのに。



 自力で屋敷のことも金銭面も何でもこなす割に「白い結婚」の意味だけは知らなかったという彼女は、僕の発言を彼女なりに忠実に実行した。僕のために環境を整え、甲斐甲斐しく僕を世話して、気付けば僕の心まで持っていった。




 僕の負けだった。




【了】

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