第14回「忘れる」:忘れられていく住人

 近所にまた空き家が一軒増えた。カーテンの取り外された窓から空っぽのリビングが寒々と晒されている。


 今回は角の家だから、この道を通るたびにあのリビングを見る羽目になるのかと気が滅入った。



 普通の住宅地なのに、この数か月で空っぽの家が一気に増えた。夜逃げでは多分ない。引っ越し業者のトラックを見る機会も増えたので、正規の引っ越しの筈だ。


 ただ立て続けに転出者が増えると、何かしらネガティブな理由があるのだろうかと疑ってしまう。そんなに住みにくい町だろうか、ここは。



 改めて、あの角の空き家と相対して立つ。

 この家に住んでいた家族はどんな人たちだったか、もう思い出すことができなかった。




 こういうところ、なのだろうか。




【了】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る