第13回「白」:白い結婚

 結婚式当日になって初めて顔を合わせた旦那様は、開口一番。


「僕達は『白い結婚』でいましょう」


 そう仰った。


「分かりました」


 そう答えた翌日から衣服を全て白い物に買い替えた。真っ黒で相応しくない長髪はバッサリ切って、白いヴェールで何とか隠した。部屋の壁紙もカーテンも絨毯も全て白、庭の薔薇も白薔薇に植え替えてもらった。


 手間もお金もかかったからか、言葉を失う旦那様へのフォローも忘れない。


「大丈夫ですよ。資金は自分の株で賄ってますから」


 持参金の無断使用はしていない。旦那様の懐は一切痛んでいないのだから心配はいらない。



 そして、旦那様へ真っ白な車椅子をプレゼントしたとき。


「僕の負けだ」


 旦那様は何故かそう仰った。




【了】

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