第11回「奪う」:俺ではなく、
首筋に剣を突き付けられても彼女は笑っていた。
こちらがいくら暴力的な言葉を吐きかけても、首の皮膚を少し裂いてみせても、彼女の表情はただの一度も変わらなかった。
陽だまりの下でお茶を嗜むような、そんな穏やかな笑顔を浮かべたまま。
「何故だ!」
堪らず叫んだ。
これから命を奪う相手に何故そんな笑顔を向けるのかと。
そこで彼女は初めて不思議そうに目を見開いて。
「だって私が消えれば、あなたの役に立つでしょう」
そう口にした。
「私はこれまで誰の何の役にも立ちませんでした。そんな私の命一つであなたのお役目に貢献できるなら、喜んで差し出しましょう」
さあ奪ってくださいと笑われて、剣を取り落とす。
嗚呼、奪ったのは、きっと。
【了】
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