第8回「鳥」:夏のふくらすずめ

 夏の直射日光が差し込む玄関先に毛玉が転がっていた。茶色と白のもふっとした。


「雀です」


 突然毛玉が喋った。今にも死にそうな声だった。


 何これ、妖怪?


「失礼な。れっきとした雀です」


 でも、雀は喋らんだろう。


「古より雀は喋りますよ。舌切り雀を知らないのですか」


 いや、あれは昔話の世界だけで許される話で。


 そもそも雀ってこんな丸かったっけ?


「冬仕様の雀です。冬があまりに寒くて冬眠していたら寝過ごしました」


 雀って冬眠せんだろ。


「確かに仲間は誰もしませんでしたね」


 ほらみろ。


「誰にも起こされないまま気付けば夏でした。暑いです。死にそうです。

 助けてください」


 ここで助けたら恩返し的物語が始まりそうだが、さてどうするかな。



【了】

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