第6回「折る」:折れても負けないもの

「鶴も折れないくせに!」


 ケタケタ耳につく複数の笑い声が容赦なく背中に突き刺さった。

 突き刺した本人らはと言うと、振り向いたところで既に逃げ去っていた。

 千代紙だけでなく、こちらの心も容易に折るんだ、あいつらは。安全なところから一方的に。


 鶴は確かに折れなかった。三角に折って四角に折るまではできても、そこから先へ進めない。翼になるところ、脚になるところが展開できない。

 僕はただ真っ直ぐ折ることしかできなかった。


 その分、真っ直ぐ折るだけでできる飛行機は得意だった。僕の紙飛行機はあいつらのものより遠く、いつまでも長く飛んだ。


 鶴よりも飛行機の方が遠くへ行ける。

 だから負けてない。


 そうして、折れた心を慰めるんだ。



【了】

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