第6回「折る」:折れても負けないもの
「鶴も折れないくせに!」
ケタケタ耳につく複数の笑い声が容赦なく背中に突き刺さった。
突き刺した本人らはと言うと、振り向いたところで既に逃げ去っていた。
千代紙だけでなく、こちらの心も容易に折るんだ、あいつらは。安全なところから一方的に。
鶴は確かに折れなかった。三角に折って四角に折るまではできても、そこから先へ進めない。翼になるところ、脚になるところが展開できない。
僕はただ真っ直ぐ折ることしかできなかった。
その分、真っ直ぐ折るだけでできる飛行機は得意だった。僕の紙飛行機はあいつらのものより遠く、いつまでも長く飛んだ。
鶴よりも飛行機の方が遠くへ行ける。
だから負けてない。
そうして、折れた心を慰めるんだ。
【了】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます