第3回「おくる」:メーデー

 メーデー、メーデー、メーデー。

 人間は、こうして助けを求めるのだろう?


 空の彼方の遠くから、地に足付けた近くから、眺めても、ただ眺めても、私は人間にはなれない。


 いくら姿を似せても、言葉を覚えても、芯が違うものだから。

 真に違うものだから。


 いつまで経っても、私はひとりだ。

 どうしようもなく、ひとりだ。


 それでも、私は知っている。

 ひとりが寂しいことを。

 理解してくれるもののいないその寂しさを、抱え続けるのが苦しいことを。


 だから、私は送る。


 時には空を漂う不可視なる姿で。

 時には人混みの中に紛れるため人を真似た姿で。


 メーデー、メーデー、メーデー。


 誰か私を助けて。

 誰か私に気付いて。


 遭難信号を、私はただ送り続けている。




【了】

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