第6話 難航する後継者問題
帝国は今、継者問題で揺れている。
何故そうなったのか、そのことについて、順を追って思い返すとしよう。
何故父が亡くなったのか。これを説明するには先々代の皇帝のことを振り返らなくてはならないだろう。
先々代の皇帝、つまり僕の祖父カールは英雄色を好むを地で行く人物だ。
亜人の国との対外戦では無類の強さを発揮して、帝国の領土を大きく広げることに成功した。
だけど、長引く戦は多大な戦費の支出を生じ、国力が低下しているのに、皇帝カールは対外戦を続けた。あまりに勝ちすぎたので、引き際を見誤ったのである。
カール崩御し、父マティアスが帝位に就いたとき、帝国の国庫は空っぽに近かった。
父は祖父の尻拭いのために東西奔走することになった。だが、近隣諸国の恨みは根深いものがあった。帝国が大幅に譲歩しても中々許してはくれなかったのだ。
そのため父マティスは魔族との決戦を急いでしまった。魔族という共通の敵を作ることで人間種族たちの連合軍を作りたかったのだ。だが、その目論みは失敗した。
周辺国との根回しも十分に出来ないまま開戦が開かれてしまった。
結果として、増援部隊が間に合わず、皇帝が討ち死にするほどの激戦となった。不幸中の幸いだが、魔族も甚大な損害を受けて、帝国に手出しできる余裕も失った。
戦が終わり五年。帝国と魔族は表だって争いはない。魔族もウィルバーン帝国も亜人の国々も全てが疲弊してしまったのだ。
父マティアスの後を継ぎ、母であるヒルダは女帝として帝国を統治。帝国議会と有力諸侯の助力を借りて、統治していた。
叔父のアルベルトも母の手助けをしてくれた。帝国はどうにか国家の立て直しを図る糸口を手に入れた。
帝国の復活が目に見えてきた。やり手であった女帝ヒルダも二年前に無くなった。
突然死であった。再び帝国は揺らぎ始める。
そのため帝国は表面上は穏やかだが、水面下では激しい権力闘争を繰り広げている。
帝国は内乱に突入する可能性も十分にあるのだ。
今は帝国議会と軍部が不満を抑えているため、どうにか分裂はしていないが、いつまで保つかは誰にも分からない。
皇帝マティアスと女帝ヒルダの間には子供が三人の遺児がいる。
マティアスと側室には子供はいない。
女帝ヒルダの子供たちは、ユーシス。アルヴィン。ディアナ。それぞれ継承権を持っている。
継承権一位の皇太子は僕、ユーシス。二位は弟のアルヴィンである。
兄妹の他にも有力な後継者は二人いる。
先々代皇帝の息子である二人の叔父だ。
叔父アルベルト。帝国議会の有力議員だった。ただし領地はあまり持っていない。
もう一人の叔父イグナート。先々代の皇帝カールの末子である。晩年、貴族の娘との間に生まれた子供である。
彼は僕の叔父ではあるが、僕よりも一つ年下という奇妙な間柄である。
妹のディアナ。あの子も継承権があるが、二人の叔父より劣る。他にも近しい親族はいるが、叔父二人より継承権は低い。
その場合は、帝国議会の審議にかけられるだろう。
継承者の血筋でいえば、、僕が帝位に就くことに何の問題もない。
だが、現実は複雑で、僕は帝位に就くことは難しいだろう。
そのことを詳しく思い返すとしよう。
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