第41話
白詰草宮殿は一か月前とは全く異なる装飾がされている。汚れひとつない緋毛氈に、格式高い金細工の飾り。ステンドグラスから差し込む陽光が、神聖な空気を醸し出している。色とりどりの影が広間を輝かせる中、壇上に立つ黒きマントを羽織った艶美な主人は、圧倒的なオーラを放ち人々を魅了していた。
(なんて……なんて美しいのだろう)
浮世離れした主人の姿に、イアンは扉が開いた瞬間から、心臓がどきどきした。
「薄い体ね……でも
「まぁそうらしいが……体格がよければ第三王子じゃなくて、もっといい職につけるだろうに」
「やっぱりオメガに要職なんて無理なんだよ」
両脇を貴族たちに囲まれながら、イアンは一歩一歩足を前に進める。観衆の囁きは、
けれど今は違う。
(彼らは……以前の俺だ。知識のない……馬鹿な俺)
オメガの体に騎士は無理だと信じていたあの頃。今ならはっきりわかる。運命の番を目標にして、本当に叶えたい夢に蓋をしていたんだと。
でももう、知識のない馬鹿はいなくなった。オメガの体は、
愛しい主人の前でイアンは跪く。陽光に照らし出されたロイは、神々しく眩しい。目を細めて見つめ合いながら、腰のレイピアを抜き、忠誠を誓う御身に差し出した。
ロイは威厳を持ってレイピアを受け取ると、跪くイアンの左肩に剣先を置く。
「イアン・エバンズよ。汝、
ロイの低い声がしんとした広間に響き渡る。イアンはロイにだけわかるように目だけで微笑み、
「はい。この身命全てを献呈し、忠節を尽くすと誓います」
とロイに命を預ける誓いを言う。
「汝、我が大意のために、私欲を捨て、揺るぎない信念を捧げると誓うか」
ロイのルビーの瞳が満足げにきらりと光った。
「はい。この
すでにイアンの心はロイのものだったが、公衆の面前で誓いを立てることに、少しだけ頬が赤くなった。
「……我、ロイ・ガーテリアは汝、イアン・エバンズを
ロイが小さく頷くと、背中から盛大な拍手の音が聞こえてくる。
イアンはこの瞬間、ぴったりと重なった気がした。理想とする
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