第16話 貴族の務め
「いい仲間を持ったわね」
王妃様と二人、テラスに出て夜風に当たった。
「本当に。でも驚かされました。私が思っていた以上のことが起こりました」
「ブレイズ公爵には気の毒だけど、これで万々歳ね。私も彼には手を焼いていた。魔女狩りの提案も彼からだった。炎呪があるから王も彼の大抵の行動は許していたわ。でもそれも今日で終わり。魔女狩りをしても、もうブレイズ家は代償の血族を用意する必要はなくなったもの。炎呪さえなければ彼がこれまでのように振る舞うこともできないでしょう」
王妃様は手すりに軽く腰掛け、笑顔で私を見た。
「あなたに助けられたわ。ありがとう」
「とんでもないです。助けられたのはむしろ私の方」
王妃様の返答が否定から始まっていたら。私の話に乗ってくれなかったら。今までヴェルメリオファミリーに手を出さないように手を回してくださらなかったら。どれだけの被害が出ていたかわからない。
「本当にありがとうございました」
「あら。私たちとても気が合うわ。あなたとなら、この国を変えられると本気で思ったもの」
もし嫁いでいたのなら、王妃様はお母様になっていたのだ。
それはそれで面白かったかもしれない。
それでも、あの時の私には……。
「ありがとうついでに、ブレイズ新当主がどうして急にイグニス・ブレイズより魔力が優ったのか、気づかなかったことにしてあげるわ」
ヨウのことはきっともう知っているだろう。
それでも容認していてくださるなら、今はよしとするべきだ。
『魔力操作』は今王家が所有していると公表しているのだ。この件は王家が勘違いだったと認めるまでは、ヨウは表立って力を使わせられないな。
それでもきっと、しばらくそんな必要もないだろう。全ての方はついたのだから。
「私、わがままでした」
王妃様はキョトンとして私を見た。
「父に逆らったら家を追い出されるとわかってて、自由になりたい一心でした。全てが窮屈に思っていたんです」
王妃様は、クスッと笑い、「わかるわぁ」と言った。
「でも私は貴族でした。そんなわがまま通るはずがない。でも王都やリベルダの人を見て、王妃様からの手紙を読んで、学友達と会って、目が覚めました。私には貴族としての使命があったと」
「だから助けてくれたの?もういいのよ。私はあなたに自由になって欲しかったから、手紙を送ったのよ」
「いいえ!私は自由になれました!」
私は今、それを心の底から王妃様に伝えたかった。
「先ほど皆の前で言ったことは、私の偽らざる本心です。必ずこの国のために貢献します。私が心からそうしたいと思ったからです」
王妃様は、嬉しそうに私を抱きしめた。
「ありがとう。だったら私も、あなたが想う国のために、あなたが望むものを用意しましょう。それくらいしかできないけど、力になるわ」
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