第12話  簒奪





「良いね。それで行こう」


 私が夕食の時間に今日あったことを、隣に座るボスに言うと、ボスはそう言った。


「それでいく……?」


 みんな各々に談笑していたが、ボスのその不穏な発言に、皆ボスの次の言葉を黙って待った。


「うん。だからさ、そのパーティーに、カインを彼氏として連れていきなさい」

「死ぬ!!」


 話をボスの隣で聞いたいたカインは冷や汗を出しながら叫んだ。


「ボス!?昨日ケーキつまみ食いしたことまだ怒ってるの!?」

「いーや」


 それに関しては全然怒ってない様子、むしろどうでもよさそうにそう言う。


「そろそろ解らせないといけないだろう?」


 解らせる?ヴェルメリオファミリーにちょっかい出したらどうなるかを?


「なめられて、殺されて、そろそろ……終わりにしようよ」


 王妃様も国は終わると言っていたが、まさかそんな夕食の話のネタからそんな重い話になるなんて……。

 そういえばトニトルス家のローラン夫人は私が鍵を握っているような占いをされたし、ヴェール様たち令嬢も私をリベルダと貴族の橋渡しになって欲しいと言っていた。ここは私がこの話をなかったことにするべきなのか……?


「ボス。折角争いが鎮まったのだから、下手に刺激しない方が得策なのでは……?」


「うん……。でもね、ヴェルメリオの看板についた泥は血と死を持ってしか拭えないんだよね」


 ごめんなさい……私本当に無力だわ……。


「王城で開かれるパーティーだ。おそらく来るだろう。ブレイズ家当主、炎呪の使い手が」

「殺すの……!?あの男を……確かに報復には彼の死は不可欠かもしれないけど……」

「それはお前たちの判断に任せる」


 ボスは私とカインを見てそう言った。


「その時、必要だと思ったなら殺せばいい。だがそうでないのなら、お前たちが手を汚す必要もないだろう」


 ボスの言葉は温かかった。何人も仲間を殺されているのに、私たちを思ってそう言っていることがわかったから。


「だとしたら俺たちは王城に行って何すりゃ良いの……?」

「もちろん、彼氏自慢してアラン殿下の血管ぶち抜いてくることだ」

「だからそれ死ぬって!!殺されるわ!!」

「冗談だよ」


 なんだ冗談か。


「カイン。お前がブレイズ家の当主になれ」

「え……?いや無理だって!!」


 この爺さん継承について何もわかってねーじゃんと言わんばかりにそう言うカイン。


「カインの魔力じゃ魔力比べに負ける。相手は純血だぜ、ボス」


 ケビンがワインを煽ってからそう言った。


「いくら何でもカインじゃ荷が重すぎるわ」


 エリナもみんなも反対だと言う様子だった。


「そうだね。カインだけなら。でもヨウ、お前がカインを最強の魔法使いにしてくれる。そうだろう?」


 ヨウは魔力操作の力がある。彼の力で無尽蔵の魔力を得たのなら、相手が純血だろうが魔力量で負けるはずがない。


 そんな不正手段で炎呪を、相伝魔法を奪うなんて……!

 考えもつかなかった!


「ヨウ。お前パーティー行くだろう?」

 

 ヨウはよくわかっていなさそうな様子だが、楽しそうな予感がしたのか、「うん!」と笑顔で大きく頷いた。

 何も知らないってなんて幸せなんだろう。


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