新型ロボット『ナリタ』
私は成田秀太郎。どうにかしても勲章や博士号を取りたい男だ。
私の父であった、成田秀明は、かつてミレニアム電池を作った。ミレニアム電池とは、電池がずっと切れることはない最高の電池の事で、それを作った父は憎まれるほど、最高の博士だった。
そして、その二代目である私は、世間から『ボンボン博士』と言われるほど、何かしらの発明が出来なかった。一応、現在進行で、ロボットの作成を試みているが、どれも失敗に終わってしまった。まだ材料費はまだあるが、その悔しさを酒に使っていた。本当にダメダメな日々だった。
そんなある日の事、私は助手の橋本隆臣をある事に呼んだ。
「成田博士、一体、何の用で?」
「橋本君、私はあるロボットを発明した!これを見よ!」
私はある物に掛けられた布をどかすと、そこには、人型のロボットが立っていた。
「これは…ロボット?」
「あぁ!しかも、ただのロボットではない!人のする事が出来るロボット、『ナリタ』だ!」
「ナ、ナリタ…?」
「名前を付ければ、愛着も湧くだろうと思ってな。じゃあ、スイッチオン!」
私はナリタのスイッチを押すと、ナリタは喋り始めた。
「ドウモ、ナリタデス。ヨロシクオネガイシマス」
「おぉ…」
すると、ナリタは隣のあったダンボールを持つと、腕がもげた。
「うわぁ!う、腕がもげた!」
「あれれ?おかしいなぁ、このダンボールには何も入ってないはずだが…」
ダンボールの中を覗いても、何も入っていなかった。
「すまない、橋本君。まだ改良して、それを見せてあげるよ」
「は、はい…」
橋本を帰らせると、私は腕がもげた原因を見てみた。原因は、腕の部分のネジがよく巻かれていなかったからだった。しかし、私はナリタをもっと改良する事にした。
それから数日後、私はまた、橋本を呼んだ。
「博士、今回は大丈夫ですよね?」
「あぁ、大丈夫だ!さぁ、改良された、『ナリタMARK2』を刮目せよ!」
私はナリタに掛かった布をどかしてやると、ナリタは喋り始めた。
「ドウモ、ナリタデス。ヨロシクオネガイシマス」
すると、ナリタはダンボールを持ち、隣の台まで運んだ。
「おぉ、これはすごい!」
「あぁ、あのダンボールの中には、約20キロのダンベルが入っている。だから、重たい物なら何でも運べる、昨日、コイツに冷蔵庫を運ばせたが、なんとか持てたぞ」
「ほほぅ…」
「じゃあ、次は耐久性だ。では、橋本くん。このハンマーで、ナリタを叩いてくれないか?」
「えっ?いいんですか?」
「あぁ、大丈夫だ。では、叩いてみてくれ」
「わかりました。よいしょっと!」
橋本がハンマーでナリタの顔を叩くと、顔の一部が凹んだ。
「は、博士!か、顔が凹みました!」
「何?わかった…じゃあ、また改良してみる」
また橋本を帰らせると、これの原因を調べた。結局、原因は、ナリタの顔に使われている鉄が錆びている事だった。
それから、私は橋本を呼び出しては、失敗の繰り返しで、ナリタは、どんどんとダメになっていった。橋本も結局、私を見限って私の所を去った。
私は家で悩んでいた。どうすれば、ナリタは究極体になるのだろうか?悩みに悩んだ結果、ある1つの事にたどり着いた。それは、人間とロボットのキメラだ。私はすぐに知り合いの一級の医者と一級の技術者を呼んだ。無論、2人に今回の計画を話したら、驚いた。しかし、2人は一級。失敗する事は無いだろう。そして、手術は始まった。
それから数時間後、手術は終わり、私はすぐに自分の姿を見た。その姿は私の計画していたものと同じだった。見た目は人間だが、中身は機械。これが私の追い求めていたものだった。
「クククク、キキキキキッ!これが私だ!完全体のナリタだ!」
そして、私はその体で橋本の所に向かった。
「すいませ〜ん、成田です」
すると、橋本がドアを開けると橋本は驚いた顔をした。
「博士、その姿は…」
「あぁ、究極完全体、ナリタだ!」
それから数ヶ月後、橋本は色んな人を成田が発明したとして集めた。
「皆さん!よく集まってくださってありがとうございます!成田博士の助手、橋本隆臣と申します!」
すると、一人の記者が橋本に質問した。
「すいません、成田博士は、どこにいらっしゃるのでしょうか?」
「今すぐに現れます!では、成田博士改め、ナリタ、カモン!」
私は舞台裏から舞台に出ると、お辞儀をしてみせた。
「どうも、新型ロボットのナリタと申します!」
無論、記者や、他の博士の皆は驚いた。なぜなら、見た目が人間の機械が現れたのだから。
「では、皆さんに私の能力をお見せしましょう」
私は舞台裏から冷蔵庫を運んだ。
「皆様!私ナリタはこのように重いものを運べます!更に!」
私は、冷蔵庫に自分の頭を打ち付けた。無論、頭は凹まなかった。
「このように耐久性にも優れています!どうか、ナリタをよろしくおねがいします!」
皆は拍手喝采だった。
それから私は、『最高の発明をした博士』として、言われる様になった。それと同時に、『自分を機械にしたマッドサイエンティスト』と呼ばれる様になったが。
そして私は、お手伝いロボット、ナリタとして、大量生産されるようになった。
私は、天を見上げた。
「父さん、私は、史上最高の発明をしたよ」
私は、手を挙げた。
すると、雲が黒くなり、ゴロゴロと言い始めた。
「あっ…」
私は雷に打たれた。どうやら、私は避雷針になったようだ。意識が途切れる瞬間、私は、こう思った。
(あぁ、帯電防止加工をしとけばよかったなぁ…)
こうして、ナリタは『世界一愚かな人型ロボット』と言われる様になった。
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